グラス

恩田陸『三月は深き紅の淵を』は四編の短編小説で構成されているが、そのうちの一つ「第二章 出雲夜想曲」は、一言で言えば旅をする話だ。 東京発、サンライズ出雲に乗って出雲に向かう話。夜行列車の中で二人の女が他愛もない話に花を咲かせる。女たちが小…

鳩の足音

川の横の遊歩道を歩く。たくさんの鳩が道を占領してちんたらちんたら歩いている。ふてぶてしいったらありゃしない。私は歩を緩めるわけもなく、早足になるわけでもなく、淡々と歩く。そろそろ鳩を蹴り上げそうな距離になって初めて、ばさばさと翼をはためか…

横断歩道

侵食 今、自分の好きな状態ではないなと思ったが、底。多分こまかくこまかく削れてしまったのだと思う。些細なことで、気付かぬうちに、それはどうしようもないこと。別に削れたものがすべて元通りになるわけではないが、もう一度ぺたぺたと土を積み上げてい…

恋愛

内房線&外房線を青春18きっぷで爆走(私ではなくJR電車が)したときに海を観に下車した駅の近くにあるドラッグストアで袋麺を買った。それを食べる(ヤックス限定竹岡式ラーメン(5袋入))。 溶いた卵をフライパンに敷いてある程度固めたらもやしを一掴み…

夜空あるいは深海のような足

夜空のように、あるいは深海のように、深い色をした、星々がプランクトンが煌めく色の万年筆を買った。 色は即決だった。迷わなかった。ペン先の字幅をいくつか試して店員さんに言った(「これにします」)。私は青が好き。そして赤も好き。 いつかしっかり…

キリマンジェロブレンド

首を寝違えたので月を見上げづらい。腰を反らして天上に輝く月を見る。しんしんと冷える一月の夜だ。 セブンイレブンにて、キリマンジャロブレンドの温かくて小さめのサイズを買う。ただそれだけを買う勇気。スマホに表示されたバーコードを読み取って決済す…

ジョグ vol.5

久々に走る。それはそれはゆっくりと走る。何も希求することのないジョギングは凪そのもので、走って良かったなあと思いながら帰路につく。 今読んでいる本(『言語が消滅する前に』)にハンナ・アレントの言葉を引っ張るところがあって、孤独(ソリチュード…

声が聞こえる

朝。世界最大級のRTAイベントらしいAGDQ2022の目隠しSEKIRO(『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』というゲームを目隠しでクリアする)の日本語実況の音声を聞きつつ、またもや延滞した本を開館する前の図書館に返却しにいく。共通一次を受ける学生を見かけた。 SE…

ソーナンス

日に日に綻んでいく廉価版モレスキンをぱらぱらとめくり、最後のページを開く。罫線が引かれただけで他は真っ白なページに、私は一行ずつ書いていく。本を読む。本の感想を書く。部屋の片づけ。勉強(具体的なことをいくつか書くが書きたくないので割愛)。…

公共的空間に流れる個人的なOne Love

電車に乗っていると、どこからともなく嵐のOne Loveが流れてくる。音の在在処がわからない。車内ではないと思うのだけど…と困惑していると、電車のドアは閉まりOne Loveがスッと消えた。どうやら外で流れていたようだ。 少し想像を巡らせてみる。仮に音の出…

たのしく本を読んでいる

私はたのしく本を読んでいる。 「そうかな。柊子さんの訳文は、いい意味でいつもそっけないけどな」 それは意外なことだった。もしもそうであるならば、それは性質なのだろう。文章には—書いたものであれ、訳したものであれ—底流として性質が流れる。避けよ…

肉まんを食べよう

ばれているかもしれないし、ばれていないかもしれないが、私は食べ物の好き嫌いが多いと思っている。ただ、他人にそう指摘されたことは無い。実の家族でさえ。 実際のところ「まったく食べない、食べれない」という食べ物は現時点ではパクチーぐらいで、出さ…

言葉が海に吸われてしまったような、そんな感覚。 昔は出かけるたびに落ち込んだ。感情は上がれば下がるもので、お出かけで楽しんだ分その反動はつらいものがあった。今でも、楽しみにしている予定のあとは必ず落ち込むものだと思ってバッファは積むようにし…

海・海・海

今日もまた海へ。 朝ご飯を食べる時間がなかったので、乗換の合間を狙って豚丼をテイクアウトして海を見ながら食べた。冬に、一人で、海を見ながら、豚丼を食べている人間なんてあまりいないだろうなあと思いながら、それでも食べた。もちろん豚丼は美味しか…

冬の好きなところ

冬の何が好きって身軽でいられるところだ、と信号が点滅する横断歩道を軽やかに駆けていく。ほら、軽い。 身軽というのは、上着のポケットに財布やらスマホやら家の鍵やらカメラを入れられる、鞄を持たずに散歩ができるから。冬は散歩が捗る。春も秋もそれぞ…

ノートと万年筆

なんちゃってモレスキン(Amazonベーシックのノート)とプラチナ万年筆の組み合わせが悪くないということに気が付いたのは、2021年12月30日のことだった。 その日私は遠い遠い場所にあるカフェにいて、ブレンドと干し芋のタルトを目の前に物思いにふけってい…

スワンボート

湖に行く、盆地に行く。私は大量に水があるところが好き、海然り川然り湖然り。一定量の水を見れば元気になるなんて単純でありがたい。 今日見つけたもの。年始から腕を骨折したらしいお兄さん(電車で遭遇、腕を包帯で吊っていた)。ファミレスでモーニング…

インスタントコーヒー

コーヒーの濃い薄いがよくわからない私だが、もしかしたらインスタントコーヒーを作るのは好きかもしれないと気がついた1月1日だった。マグカップに粉を入れて、お湯をとぽとぽと注ぎ、スプーンで溶かし、ついでに砂糖もいれて、出来上がった黒い液体を飲む…

好きではないこの日に

King Gnu『The hole』の冒頭の歌詞が好きで、思い出したように聴くことがある。 晴れた空、公園のベンチで1人 誰かを想ったりする日もある 世界がいつもより穏やかに見える日は 自分の心模様を見ているのだろう (King Gnu『The hole』) 私はたぶん大晦日の…

ホットケーキ

ホットケーキ リンゴを砂糖で煮詰めたもの(シナモンをこれでもかと振り入れた)を種に混ぜ込みホットケーキを作る。最初の一枚は焼き過ぎて少し焦げた。料理をするときは本を読むことが多いので、例に漏れず短いエッセイを読みながら焼いている。と、だいた…

とても淡い恐怖

横断歩道を渡るとき、私は車に轢かれる気がしてならない。 車に乗っていても事故に遭う気がする。特に交差点を曲がるとき、直進の車にぶつかる自分を想像をする。電車はあまり思わないけど、鉄橋を渡るとき、カーブするとき、快調に飛ばす快速に乗っていると…

水仙

図書館が開くまでに延滞していた本を返却したかったので、北風吹き抜けるよく晴れた休みの朝、勤勉に外に出る。今日は特に寒い。風が冷たい。どうして地球はこんなにも寒いのだろう(そして半年もすれば真逆なことに対して怒ることになるのだが)でも、寒い…

参拝

とある神社へ。特に年末詣のつもりもなければ、最低限のお参りをした上で何か買うこともなかったが(後述の三食団子を除く)ほどほどの人手でかなりゆったりとまわることができたと思う。参道から一本逸れた道には私以外誰もいない。 なんというか、自然のス…

クリスマスプレゼント

自分の言葉に価値はないと思うとき、どうして落ち込むのだろうということを考えている。私の言葉に価値があると言われたとして、それを真正面から受け止められないのは何故だろうということも考えている。 喋りたくないから喋らない。そういう強さが欲しい。…

泣き方

退屈 電車に揺られながら、ふと自分は退屈なのだと思いその考えに少しだけ動揺する。書くことの理由は様々だけれども「退屈さを紛らす」という目的もあったことは確かだ。退屈にも種類があって、良い退屈と悪い退屈なら今日のは後者だった。悪い退屈には、魔…

ポケモンカード

食玩売り場でたまたま見つけたポケモンカードの拡張パック「フュージョンアーツ」のグミを買って家に帰ってから開けるとヤブクロンというポケモンのカードが1枚入っていた。グミはグレープ味のモンスターボールを模した円形で、今まで食べたどのグミとも食感…

何も無さ

眠い。当たり前。寝ようとしている時に書いているのだから。 今日は自分が書いたこのブログの記事を読み返して、好きなものとそこまで好きでもないものとに分けたら、好きなものはそこまで多くなく、好きでもないものの方が当たり前に多かった。基本的に私は…

海へ

海へ。 波が寄せる瞬間、しゅわしゅわしておった。 ビールの缶をぷしゅーと開けてぐびりと飲むと美味しそうだなと思ったが、あいにく私は炭酸は飲めない。 角が取れすべすべと滑らかな石がたくさん転がっていた。そのうち、二三個よさそうなものを見繕ってジ…

まいそう

「まいそう」と言えばあれしかないよな。埋葬。と書いたら間違っていた。どうやら正解は「昧爽」らしい。昧爽、夜明けの意。昧は「くらい」という意味がある漢字だったと思うから(無知蒙昧とか曖昧とか)わからなくもない。爽は「さわやか」という意味の他…

かくめいは、ひとがらくにいきるためにおこなうものです

珍しく湯船につかりながら本を読む。もわもわと蒸気が浴室に充満して眼鏡のレンズが曇る。太宰の小説を読んでいた。たまにはいいじゃないか、と思っている。そうだな、時々ラーメンを無性に食べたくなるように、芥川やら太宰やらが読みたくなることがある。…