私の背の高さほどの灌木に囲まれた窪みのような場所にベンチがひとつ、置いてある。そこに小学生らしき少年3人が肩を寄せ合って座っていた。そのベンチは三人掛けだったので自ずと彼らはだんご3兄弟のような親密さを形成していた。 彼らはマクドナルドのバー…
恋をして終わりを告げ、たわけではなく、雨が降っていて桜が咲いているならそれはSAKURAドロップス(宇多田ヒカル)なのである。もう当分(それこそあと1年くらいは)聴かないだろうと思うくらい、延々と聴いていた。 どうでもいい思い出話をしていいか。SAK…
その店を知ったのは偶々だった。本当は別の、かねてから行きたかった喫茶店に行くつもりだった。だけれど私は喫茶店には行かずにガレットを食べることになった。その喫茶店はいくつか電車の乗り換えを経てたどり着けるお店で、乗り換えのことを想像すると、…
本を読んでいる。きちんと読めている。読めていない期間もあるにはあって、だけれど、少なくとも今はそのタームではない。私はちゃんと本を読んでいる。 本を読みながら考える。私にとって読書の一番の目的は(目的という言葉は少しニュアンスが違うが適当な…
生暖かい空気が満ちている。雨が不規則に降る。時に穏やかに、時に力強く音を立てて。湿度は高いだろうに口の中が渇いているのを感じる。何か冷たいものを飲みたい。帰宅するまでの辛抱である。ぬるい空気が長袖トレーナーとウィンドブレーカーの隙間に入り…
階段は階段だと認識したときから階段である。今、思いついたことです。著名な誰かの格言ではありません。 私にとっての階段は何か。そりゃあ色々あるけども、この瞬間ぱっと思いつくのは、目下取り掛かり中の仕事のことである。手をつければ私のことだからあ…
そりゃあ楽したいですから混雑していなければエスカレーターに乗る私、でも行列ができているとおとなしく階段でのぼる。今日も改札口に上がるための長い長い階段をのぼっていたところ、息が切れないことに気づく。日頃の散歩のたまものだろうか。今日の歩行…
花を並べていくと、どこか気恥ずかしい。花以外も撮っていくぞ、と決意新たに。
幼馴染ふたりと食事。目玉焼きハンバーグ(ドリンクバー付き、ライス大盛り)を注文して、確かにハンバーグを食べたと思うがどういう味だったか覚えていない。人と食事するとき、ご飯をゆっくり味わえた試しがない(というのは言い過ぎ)。 よく喋り、よく笑…
水辺の近くを歩く。川岸に芝生が広がっていて群れ咲く水仙の白と黄色の鮮やかさに魅入る。芝生は素直なもので、冬の白っぽさから一転、日に日に濃く青くなっていく。スニーカーで横断するとき、私は少し緊張する。植物を踏んでいいものかしら、という躊躇い…
曇天であり、私は宇多田ヒカルの『俺の彼女』を聴いている。暗鬱な朝である。七分丈一枚で出歩くには肌寒い朝だった。春だからと舐めていると、こういう寒さにぶち当たる。私はほんの少しだけ、家の周りを歩くことにする。ぐるっと一周。いつものルートを反…
歩いていたら(私はまた歩いている)ツバキを見かけた。ピンクのツバキだ。花弁が多層で存在感のある花。 私が気になったのは華やかに咲きほこる花ではなく、丸っこい蕾の方だった。鶏卵のような、欠点のない、そうだな私に言わせれば「完璧な」フォルム。卵…
その事に対してその人が感じたことはその人にしかわからないのだよなあ(その人ですらわからない場合もある)という考えが、歩きながらふっと浮きあがってきた。ユキヤナギが真っ白に咲く、春の小道の出来事だった。 その人にしかわからないという、概ねその…
脳も疲れているし、空腹だし、端的に言えば無理をしている今日だけど、それが一日だけならまあいいかなあ、という気持ちの上澄みでこうして文章を書いている。何かしら書かなければ気が済まないという病に罹っている私。今日の疲れは気持ちをハイにするタイ…
髪を切りに美容室へ行く。お互い勝手知ったる美容師なので、ボクシングのような会話の応酬となる。澱みないテンポ。とめどなく流れる会話の一方で、私は慎重に言葉を選びながら話す。それはなんだかパソコンのキーボード変換のようだと思う。 髪を染めようか…
板チョコの背中 初めてやる背中の動的ストレッチの翌朝は背中がばっきばきに痛んで、板チョコ(ビター)を食べたいと連想する。私は筋肉痛が好きな質で、それは筋肉の存在を感知できるから。そのストレッチのせいなのか、あるいはただ単に疲れているからか、…
私は自分が優しい人間だとは思っていない。一般的な意味での思い遣りがあるとも思っていない。でも、多分私は、思い遣りがある人間だと思われている(その評価が間違いなら以下の文章は私の杞憂である)。その乖離は何なのか。 観点というのを後天的に学習し…
当時の上司が仕事中に間食を嗜む人だった。ブルボンのアルフォートをひとつひとつ大事に食べる人だった。半面がチョコでコーティングされたクッキーをひとつ口に放り、残りは箱に戻して仕事を続ける。なんて自律できている人なんだ!と、上司の所作を見なが…
のんびりと歩いていたら、肉厚で真っ白な花をつけた木と出会う。おじいさんが傍に自転車を停め、スマホを花のひとつに近づけている。写真を撮っているのだろうか。背中が温かい。いや、熱い。 そういえば、と私はGoogleアプリを立ち上げて、画像検索で花を検…
会食。座敷にてしゃぶしゃぶ。二つのテーブルに、鶏白湯と辛いつゆ、昆布だしとすきやきの二つの鍋が置かれる。私は二つのテーブルのちょうど真ん中に位置するところに座っていて、すきやきは食べず昆布だしは一番遠いので、鶏白湯と辛いつゆだけを黙々と食…
かねてから行ってみたいと思っていた場所へ行く。 調べものは最低限。スタートとゴールを決めて、電車の時刻を調べて、あとは大雑把な位置関係だけGoogleマップで頭に入れて行くのが私のやり方である。おかげで効率が悪い行程だと思うし見逃しているものも多…
最近の私は、よく歩く。元々歩くことが苦ではなく、時間が許してくれるなら移動手段に徒歩を採用することも厭わない人間だったが、近ごろは散歩も意識的にするようにしている。ただ、なかなか歩数は稼げないものだ。一日一万歩って、正気か、と思う(今の私…
生まれ変わったところで自我は別のものになりそうだが(今の私に前世の記憶はない)生まれ変わるならサッカーの好きな少年になって、無尽蔵の体力で芝生を駆け回り、ひたすらにサッカーボールを追いかけたい、と思う。三角形の三点になり、サッカーボールを…
つまりこの状態は言ってみれば「キレてる」なのかもしれない。 私、キレています。何にキレているかというと、端的に言えば「自分が負う責任への評価が甘い人間にキレている」のだが、まあ、思考が加速して仕方がない。私、ウキウキである。 以下は私が冷静…
手を繋ぎたいと思うものなのだろうか。これを読んでいるあなた、思いますか。 A駅からB駅まで1時間ほど歩いた。本当は帰りに喫茶店に寄りたかったのだけれど、体は疲れていたようで、駅とは反対の方向へ足が勝手に動いたのだ。 気に入っている道を歩いている…
元来、元気な人間である。なので自分の体調面に意識を割くということをしたことがなかったな、とふとしたときに思った。対して最近の私はメンタルの調子にめちゃめちゃ気を遣っているなあとも思うのだった。 それもこれも、落ちると落ちた後のリカバリが面倒…
散歩の供に自分で原液を薄めて作ったカルピスを選ぶと、歩くときのテンションが10%ほど上がる。 水筒で作るのは憚られたカルピスも、プラスチックのウォーターボトルなら不思議と抵抗感がない。透明なボトルに七分の一ほどの原液を入れて、氷を入れて、水を…
今週は連日寝る時間が遅く、その反動からか眠たくて午後はずっと眠っていた。泥に沈み、這いあがれないような眠りだった。 普段行かないスーパーに出かけると、縦長のカップに入った普通のコーヒーゼリーと飲むコーヒーゼリーが並べてあって、歩きながら飲も…
私が中学生か、それよりもっと昔か「脳内メーカー」というものが流行した。今でいう診断メーカーと似ている。名前からその人の脳内のイメージを自動生成するという、根拠もなにもない、「くだらない」と切って捨ててしまってもいいもの(でも、こうして文章…
ある休日の記録である。 夕暮れ時になり、私は自分に鞭を打つとガサガサと身支度をして外に出た。朝、出られない。昼、出られない。夜は寒いだろう。そして、今日は夜空を見たい気分でもなかった。夕暮れを逃すと、逃した分だけ私は自分のことが嫌いになる気…