2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

みかん

ぺりぺりと皮を剥いた温州みかんを一房口に入れると、果物らしい弾けるような酸味が口に広がった。果物といえば、どこかからいつの間にか送られてくる、早く食べないと腐ってしまうもの、という思いが強いけれど、それだけではないのかもしれないと思えたの…

星を繋ぐ

一人焼肉、海、電車、ノートをそれぞれ繋ぐ。 一人焼肉 やりたいこと、行きたいところ、買いたいものなどを思いつくたびに、忘れないようにノートにメモしている。出かけたいけれど、行きたい場所が思いつかないとき、私は書き記しておいたリストを読み返し…

可愛らしいノート

日記帳に使うには到底ページ数が足りず、罫の幅が大きく、小さな、可愛らしいノートを買ってしまった。用途に先んじて、その愛らしさが私に手を取らせた。 仕方がないので、その日にやったことや面白かったことを書くことにする。日記とは別で? 日記とは別…

腕の話だ。 人によって違うのかもしれないけれど、私の場合、自分のからだの部位で一番視界に入るのは手と腕だと思っている。鏡やディスプレイに映る自分の顔ではない。 手のひらも腕も、昔から馴染みのある肉感を維持している。すらりと細長い指や「今にも…

透明

息ができるように、とりあえず鼻から上は掛け布団から出しておく、朝。頭から被るのは私は息苦しいので耐えられない。 今でも好きなこと。掛け布団に潜って裸足で寝具をさすること。あとはよく冷えた烏龍茶を飲むこと。冬でも変わらない。 大学ノートをひら…

明け方の図書館

久しぶりに本を借りる。リハビリなので上限MAXは借りずに、あくまで読み切れるだけの冊数を抱え自動貸し出し機まで運ぶ。 本を借りるというのは、希望を前借しているような感覚。気持ちがなるべく萎まないように、いいや、あんまり期待しすぎない方がいいの…

メモランダム vol.12

散歩 カーディーラーの窓越しの客は何故か不遜に思える。「高い買い物をする」ということに伴うある種の権威性か。グダっとしていて椅子にちゃんと座われていない男が無表情でスマホを操作している。 空が青い。 整理してる写真のことを考える。昨冬はとにか…

スロー

ジム。腕、胸、肩、腹筋、背筋、あとはクロストレーナーを30分。やっぱりサボるのは効率が悪いといいますか、理想は毎日コツコツなのよね、と思いながら、筋トレをする。もう一度積み上げなければならない。白髪の老人がリカンベントバイクに座り競馬新聞に…

お休み中

映画「魔女の宅急便」の台詞の中で好きなものの一つに、「今、お休み中なの」がある。 なんて可愛らしい言葉なのだろう。そして、本質的な言葉というか、人間「お休み」が必要になるときは、ある。いい言葉だと今でも思っている。歩き方がわからなくなること…

氾濫

それは泥に沈み込むような眠りだった。 事の発端は、タンブラーをひっくり返したこと。床にこぼれた緑茶がキャビネットの下にまで流れていく。 倒れたタンブラーを呆然と眺めながら、遅れてやってきた苛立ちを深い呼吸と一緒に吐き出し、私は手近にあったタ…

卵を多めに食べたい

私が率先してサラダを取り分けるのは、気遣いができる人だと思われたいわけでも、誰かに気を遣ってるわけでもなく、主導権を握って私の小皿にだけちょっと多めにオリーブとか卵とかを乗せたいからだし、私が早く食べたいからなんだよな。そこを勘違いしても…

雨に歌う

折りたたみ傘を使いたいことに加え、そもそもこの時間にこのエリアを歩ける機会もあまりないので1時間ほど歩く。 車が走っている。街灯の灯りがある。コンクリートの建物もたくさんある。「人間」だけがいない。それを「歓び」と思えてしまうぐらいには人間…

折りたたみ傘

折りたたみ傘を捨てた。壊れてしまったから。天気予報を見るのをいつも忘れてしまう。使った折りたたみ傘を干してくるくると巻いて閉まって鞄にもう一度入れておく、ということができない。 折りたたみ傘、嫌い。 折りたたみ傘を好きになるために、考えて考…

つめたい水

暖房のついていない部屋。湯あがりでほかほかのからだ。温くなりにくいタンブラーの中には緑茶、氷入り。口をつけ、つめたい液体をゆっくりとからだの中に流していく。飲み込むときにごくりと喉が鳴るのが聞こえた。暖房のついていない室内はとても静かで、…

泣きながら食べたことはない

ドラマ「カルテット」の台詞に「泣きながらご飯を食べたことのある人は、生きていけます」というのが、ある、らしい。見たことはあると思うのに、そういう台詞あったよねえと断言できないふわふわとした感覚。 誰かの背骨にもなってるだろうこの言葉、私は「…

チキンマックナゲット

マクドナルドにはチキンマックナゲットというものがあり、それが15ピース入っているボックスが売られている。ホームページには期間限定と書かれていたからずっと売られているものではないのかもしれない。 「あと1日で人類が滅びるとすれば」とりあえず私は…

薄いノート

べらぼうに分厚い日記帳を使っているが故に日記を書けていないのだとすれば。 その仮説に則り、薄っぺらいノートに一時的に逃避することにした。昔と違うのは、いずれは分厚い日記帳に戻ってこようと思っていること。これは《中断》である。 あとは、人格を…

本格和風インドカレー

都内某所。夜。「本格和風インドカレー」と謳う店の看板。 日本の家庭に広く浸透しているあのカレーなのか、それとも本場インド風のカレーなのか、いいや、日本で独自進化を遂げたインドカレーってことなのか、二重三重にも読みとれる看板を見て「面白いなー…

再構築

長いながい散歩。 月並みだけど、生きるのって苦しいなあ、ということを歩きながら考えてしまった。 私のスタンスとしては「生きることって全般的に悲しい」であり、それは貝類の肝のように苦い、ぐらいに捉えられているぐらいがちょうどよいと思われる。あ…

ジョグ vol.12 面倒と後悔

ジョギングシューズではなく普段使いのスニーカーを履いてきてしまった。走り始めてすぐに気づく。引き返そうか。いいや、面倒。このまま走ろう。そう決めたはいいものの、後ろ髪引かれる。普通のスニーカーで走れば走るほど「ジョギングシューズで快適に走…

退屈

時刻は朝の7時43分。電車の中で私は退屈を持て余している。 用意に手間取り、持ち歩く本を選び損ねた。苦し紛れに、その辺に置いてあった文芸誌一冊を手に取って手提げに入れたが、読む気は最初から無い。 車窓から見える景色は光に染まっている。どの建物も…

不安(メモリ使用率を減らせ)

もう自分のことについて、自分の内面を掘り下げるスタイルでもの書くのはやめよう、というのがこのブログの出発点で、だからこのような文章を書くことはやりたいことではない。少なくともそういう気持ちでは書いてきた。実態は理想と異なるかもしれないけれ…

焼きうどん

朝から焼きうどんを作って食べる。 レンジで少し温めたうどんを小さなフライパンに入れる、炒める。塩、適量。炒める。味の素、4振り。炒める。火を止めて醤油を少し回しかけて、かつおぶしを上に散らす。丘の上に咲き乱れる花のように表面をかつおぶしで覆…

ジョグ vol.11

きりりと締め上げるような寒さだ。冬が来てしまった。ジョグ。体が少し重たい。1週間とちょっと以来のジョグだけど、重たいの? 気持ち、スピードを緩める。ただでさえペースは遅いのに、もはや歩いた方が早いのでは、と思う速度でとろとろと走る。それもま…

カピバラになる日もある

先ほどから半分に切ったりんごをシャリシャリと食べている。大量にりんごがあって、それを調理するのも面倒、皮を剥くこともくし形に切ることも面倒。仕方なく私はりんごを半分に切って、皮ごと食べることにする。 面倒くさがり屋かそうでないかと聞かれれば…

緑色のインク

「死んでやるう!」と唐突に叫ぶと、十三子は机の上のインクに手を伸ばし、蓋をきゅぽんと捻ると、口をがばっとひらいて中身を注ぎ込もうとしたので、晶は驚き、急いで彼女の手を押さえた。 十三子が愛用するインクは、藻を限りなく増殖させたものを濾したよ…