奄美大島が大好き

「僕は奄美大島が大好きだよう」

音を鳴らしていないヘッドフォンは、ノイズキャンセリングなど無くてもある程度防音効果があって、例えば私は「あなたの話が聞きたくないです」モードの時はよくヘッドフォンをしている。ちょうど良い塩梅で外の音が聞こえない耳栓代わりになる。だからぼーっとしていたとはいえ自分がそれを会話だと認識するほどに大きな声で言っていたのだ。

奄美大島が大好き?気になりすぎる。聞いてしまったからには私はブンッと頭を上げずにはいられなかった。どういう文脈なら「私は奄美大島が大好きです」と言った話になるのか。もちろん訪れたことがないにしても、奄美大島が素敵な場所であるということは想像に難くない。

見るとその発言者は私の右を同じ方向に向かって歩いていた男性で、これまた笑ってしまいたくなるほど(笑わない)こんがりと日に焼けたミドルの方で、金の腕時計は確認できなかったけれどつけていそうな、そしてこちらは確認できたけれど黒のクラッチバッグを持っていた「いかにも」な男性だった。奄美大島。南の島。綺麗な海。そよぐ風。奄美大島が好きな男性にぴったりだ。