好きではない言葉

 別に言われたことはないのだけれど。

 「お前に(あなたに)俺の(私の)何がわかるの?」という言葉を耳にする機会があって、ああ、私この言葉好きじゃないなと思って、少し笑って、そのあとしばらく嫌な気持ちが続いた。なに当たり前のこと言ってんの。そんなのわかりきっているのに。『水戸黄門』の印籠みたいに振りかざして、ばっかみたい、って思った。

 わかるわけがない。完璧な理解などありえない。だって私はあなたではないし、あなたは私ではないのだから。しかし人は(私は)完璧な理解を求める。やっぱり寂しいし不安だから。でもありえないんだよ。ありえないということをわからなきゃダメなんだってどこかで思った。

 「あなたに何がわかるの?」という言葉は、私には拒絶のように思えて、拒絶した上で相手が自分の元に駆け寄ってくれるのを期待しているのかな、だとすれば甘ったれてると思ってしまう。迂遠なやり方せず直接伝えればいいのに。

 望んでいるのは「他者からの理解」以外にもあるかもしれない。見当違いに爆発するなら、とりあえず自分が望んでいるものを整理してから駄々をこねてほしいって、思う。

 結局のところ何らかの理由があって傷ついているということなのだと思う。その傷を癒すところから始めないと仕方がないね、なんてことを考えていた。