いつ買ったのだったか、おそらく数ヶ月前だ、ずっと読めてなかったアリ・スミスの『春』を読み始める。変わらず詩的な文章、素敵な物語。心躍る小説に出会うと日常がぱっと明るくなる。

 本を読みたいが為に電車に乗りたい。読書が一番捗るのは電車の中、というのは依然として変わらない。徐々にそのあたりは変えたいと思っている。電車でなければ読書が捗らない、なんて。これはあくまで自分に対してだけれど、それって馬鹿げている。いつまでも電車があって、いつまでもそれに乗り続けるわけにはいかない。今時の言葉で言うならサステナブルではないのでは? 長期的にみればどこでだって読書が捗る方が利がある。いいや、利を求めに本を開くわけではないけれど。本を読む行為の方が電車に乗ることより先にあった。電車はいつから? 少なくとも産業革命より後。本はいつから? 活版印刷が生まれてから何十年、何百年後。いいや、その前から「本」というものはあった。手書きで連綿と続いていた営み。

 散歩しながら本を読めたらいいのに、と思う。時々どうしても続きが気になって歩きながら本を読むことはあるにはあるが、ちょっと違うのかもしれない。自転車を漕ぎながら本を読めたらいいのに、の方が真意に近い。脳と一緒にどうやら体も動かしたくなるらしい。