賢者様

 スマホ向け育成ゲーム『魔法使いの約束』を今まで3回インストールして3回アンインストールしてきた。ゲームシステムがどうも苦手らしい。登場する魔法使いたちを好きになりたいというのに、それはどうやら無理そうだと、休日、土曜日の起きがけにちょこちょこと遊びながら悲しい気持ちになって、アプリを長押し、4回目のアンインストールをした。

 『魔法使いの約束』、通称「まほやく」では、最初の設定でプレイヤーを男性か女性に選択できるようになっている。ポケモンみたいだ。私は今までポケモンで遊ぶときはずっと女性を選んできたけれど、まほやくを始めるとき、初めて男性を選んでみようかなと思った。なので男性を選んだ。デフォルトで「晶」と呼ばれる。晶はジェンダーレスな名前だと思う。名前については難しい。中学の同級生にも同じ漢字の女の子がいたことを思い出す。

 ゲームにおいてプレイヤーが操作するキャラクターと自分自身をどう紐づけるかは人それぞれだと思うが、私は操作キャラと自己がかなり近いタイプだと思う。まるっきり重なり合わせるわけではないが、「私が」旅をしているし、「私が」好きなポケモンを仲間にして戦わせるし、そもそも「私の」本名を名付けた。そういう感覚がある。だから操作キャラの性別を選べるときは、大概女性を選んだ。女性を選ぶことに抵抗がなかった。今ならこの選択で一瞬躊躇う人もいることをなんとなくだけど想像できる。

 「まほやく」に限らず、女性をターゲットにしたゲームでは往々にして見られる甘やかな交歓。それを私は恋愛だとは思わないけれど、恋愛的に受け止められることも想定しているような絶妙な距離感が苦手と言えば苦手だった。機嫌が極端に悪いと腹を立てることもあるにはあった。頼むから恋愛というものを匂わせないでくれ、と憤った。

 男性キャラにすればそういう甘やかさから解放されるかなと思ったけれど、その場しのぎと思わなくもない。プレイヤーの性別が何であれ、そういうゲームは恋愛の情に訴えかける構造に変わりはなく、性別は関係ない。また、恋愛的にゲームを楽しむ人もいればそうでない人もいて、その幅は広く取られていることもわかっているから、まあ、私の機嫌が悪いのだろうなと思っている。このあたりの感覚はまだうまく言語化できていない。

 私は女性だからやっぱり女性キャラで操作したいな。でも、無傷で無邪気に楽しむにはちょっと甘めなやり取りが多い気がする、スマホの「かっこいい」男性キャラがたくさん登場しがちなゲームには特に。けれど、失われるとそれはそれで寂しい大きな感情。難しいことであるなあと、思う。