開け放した窓からしとしとと雨音が聞こえてきた。傘を買いたい。可愛い傘を買おうと思っているのにずっと買うことができていないこと、雨雲の到来で思い出す。透明なビニール傘がいい。可愛い柄がプリントされた傘を。

 良い悲しさと悪い悲しさがあって、良い悲しさというのはゆとりがある。独特の余白がある。埋めたいのに埋められない空白があって、ウイスキーの芳香のような飴色をしている。悪い悲しさというのはもっと黒みがかっていて余裕がない。艶やかな深緑色をしていて苔の色に似ている。そして必ず未来を悲観する。今日は良い悲しさなので悪くない感じだ。

 さっさと寝よう。私は疲れている。今考えても、新しいものは何も浮かばないだろう。

  むせかえるとろみを帯びた秋霖