壊れそうなくらいには

 予定している旅行の、点と点を予め整理しておく。

 父の癌発覚に伴う、私が後悔しないための旅行だ、私の好きにする(もちろん他の人にも配慮はするけど)。金は惜しまない。現地ではもしかしたらばらばらに行動するかもしれない。その場所に行ける機会はなかなか無いし、私は一度行った場所に再び行くことを好まないから、これを逃すと訪れることはないかもしれない。

 楽しみにしている。分厚い本を持っていきたい。ノートも数冊持っていきたい。ゆったりと書き物ができそうな気配もある。楽しみ。とても。私が壊れそうなくらいには、楽しみ。

 普段、飛び上がるほどに嬉しいこと(星野源「フィルム」より)って無くて、それは私が壊れないためには大切なことで、嬉しいことばかりだと多分私は爆発するからこれぐらいの頻度でいいなと思う。嬉しいことは苦しい。楽しいことも、苦しい。楽しくないことがより苦しくなるから、だったら楽しくなくていい、と思ってしまう。私はごくごく微量の楽しさを見つけることに長けてるから、十分やっていける。

 本人に聞いてはないけれど、癌は小さくなっているらしい。薬で癌が小さくなるだなんて、不思議だわね。一体どうしてそんなことができるのだろう。

 壊れそうだ。楽しみでも壊れそうだし、普段の日常でも、違う意味で。壊れないように、やっていかねばならない。