ラム酒入りのチョコレート

 ラム酒入りのチョコレートを口の中に放り込むと、酒の芳香が確かに口いっぱいに広がる。ただ、それがラムの味なのかどうかはパッケージが主張しているからその一点に委ねられ、私は判別することができない。平生、酒を飲むことがなく味と名前が一致しないのだ。

 Apple Musicのトップ画面は私の好みにカスタマイズされ、あの曲はどうだ、この曲は聴いたかとあの手この手で曲を勧めてくる。その中にASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム「君繋ファイブエム」があったので、久々に、と聴いてみる。「夏の日、残像」からの「無限グライダー」の永遠ループが好きだが、「自閉探索」も好き。

すれ違ったその誤差に切手貼って

無性に叩き割ったその訳を常々探してる

ずれてしまったその朝に必死になって

無性に引き千切った瞬間を悔やんで泣いてるだけ

ASIAN KUNG-FU GENERATION「自閉探索」)

 あなたが思い描いた未来を生きていますか?という問いに対してはNoである。そもそも私は未来を思い描いてなかったから。ラム酒入りチョコレートをつまみながら「自閉探索」を聴く未来なんて、描けるわけがない。

 未来を描けなかった昔とは異なり、良い意味で未来に期待しておらず「今」しかない今が私は気に入っていて、こういう気持ちで人生を終わらせられたら最高じゃんね、と思う。

 あいにくチョコレートでは酔えない。そもそも私は酔うことは好きじゃない。