幕間 2

2024/7/12 7:31のメモ

気持ち的には特に動きはなし。慣れたか。

父方の伯母が「連絡入れたのにLINEの反応がない。体壊して入院しているんじゃないか」と、母に連絡してきたらしい。勘が良いな。まあ、推測可能なことではあるか。ちなみにこの伯母は数年前に癌を経験し、今は問題がなく生活している。本人は「実姉には連絡するな」と主張しており、その場はとりあえず収まったとのこと。伯母の話題は送ったスイカのこともあるが、伯母にとっては義母にあたる人かな、がつい先日亡くなり葬儀があるのだが、なかなか関係が難しくてね、という話。どたばたして、と。その上、今回の件は言えないわな。聞いたら伯母も困るだろう。

本人の意思を尊重する必要があるらしい。ごもっともな話であるが、こういう時になると意外と人間はその前提を忘れ侵入してしまうものだということを知る。こういう時に限らず、私たちは当事者の意思や誇りを踏み躙ることが、往々にしてある。

私は、デジタルの空間と紙の日記、ボイスメモに吐き出すばかりである。混みいった話を打ち明けることのできる人間関係は構築してないし、打ち明けなければならない関係の方がきついかもしれない。私はあんまり具体的な他者とこういう話を共有したいと思わない。意見が欲しいわけではない(なぜなら私がまずは考えることだから)。話を聞いてほしいわけでもない。じゃあこの場所は? この場所は、なんだろう。ただ、喋りたいだけだ。

手術。私はここに詳細なことを書けるが、書いていいものか迷い、一旦書くのはやめておく。とりあえず、癌を切除するための手術ではないことだけ。何も好転しないし、何も暗転しない手術。

この状況になっても、あの人の掴みどころのなさというか、そういうのが苦手だと思う。変なヒロイズムというか、家父長制に縛られた人って感じはする。もう少し弱かったらよかったのに。いや、己の弱さを受け止めて他者と共有する強さがあればよかったのに。こんな感じで好き勝手言ってるが、基本的に私は人の見る目がない。この場合の「見る目がない」というのは、人を的確に分析できない、ということである。ここ最近自覚してきたことだけど、自分で勝手に決めて行動してしまうところが私にあるとするならばよく似ている。でも、そうなってしまうロジックは別かもしれない。

関心は、感情から、実際的な話に移りつつある。私は今このとき何をするのが最適解なのか、みたいな。

 

2024/7/12 12:27のメモ

忘れている。私には、私の思考があり、好きなものがあり、やりたいことがある。私はあの人じゃない。私はあの人の人生を歩んでいるわけではない。そういう気持ちを観測した。働いていると思考が分断される。休みでも裁断している。長い時間考えることが必要だ。でも、行きたいところがない。行きたいとも思ってない。どこかに行くべきではある。

なんのことかと思われるかもしれないが、ファイナルファンタジー10である。いつかお嬢様になりたい系VTuberであるサロメさん(壱百満天原サロメ)が、最近FF10を遊ばれているようで、時々、少しずつ観ている。かのゲームは、私の死生観に多大なる影響を与えたゲームなので、今回の件で自ずと考えていたのだろう。

 

2024/7/14 9:31のメモ

概ね通常通り。私はこのことを的確に量ることができているのだろうか不安になる。

 

2024/7/14 16:07のメモ

見舞い。着替えを持っていくというので付き添い。ただ着替えを受け渡すぐらいだと思っていたが、本人が手続きをしていたようで、面会室に通される。いきなり会わなければならず、私は気分が悪くなる。できれば会いたくなかった。それは病関係なく、私があの人と喋りたくないから。さらには病院に行きがてら車の運転の練習をしなさいと(それは私も乗り気だった)いうことで、ストレスがかかる一日だった。午前中からずっと、わずかだが緊張し続けていた。

病院は嫌いなわけではない。

守衛室で手続きをして、私は青いバッヂをもらった。服に針を刺したくなくて、ショルダーバッグの紐にぱちんと挟んだ。そこそこの数の人がひっきりなしにカウンターに向かい、去っていく。それだけ面会する人がいるということだ。お父さんらしき人と小さな男の子二人がばたばたと廊下を去っていった。

千と千尋の神隠しに出てくる湯屋みたいな病院だった。エレベーターの乗り継ぎをするのだ。初見じゃわからないねえ、と話した。

面会室は小さな部屋で、そこを予約して押さえておくというシステムらしい。キッチンタイマーが扉にくっついてて、きっちり20分。病院に行く前は、20分も話すことなんてない(話したくない)と言った私だが、きっちり20分話した。タイマーが鳴った。親戚にはどのタイミングで何を伝えようか、今後の予定は、手術の内容は。

元気そうだった。傍目から見れば病人とは思われないだろう。自力で歩いているし、喋りも、昔から同じ。

この病院にはカフェがあるという。あの人がカフェラテを奢ってくれた。ロビーで別れた。あの人は廊下に消え、私たちは外に出た。好きなことをしようと思った。院内は冷房か効いてるね。外は蒸し暑い。でも院内でできることは限られているね。

 

2024/7/15 5:17のメモ

そういえば、父は伯母に連絡したと言っていた。スイカありがとう、向こうの親族によろしく、とだけ。忙しくて今はあんまり連絡できない的なことを言って濁した、と言っていた。こりゃ、伯母はわかるだろうなと思った。その上で、おそらくは放っておいてくれるだろう。自分が退院するまでに腐るだろうから食べて、と言った。食べ切れる気がしない。

 

2024/7/15 7:39のメモ

今に始まったわけではないが、今回の件をきっかけに「自分が何らかの病気だったらどうしよう」という不安が出てくる。論理的に回答しようと試みる。

あら、何か不安なことがあって? 年齢はまだ若い。症状があるわけでもない。運動も定期的にしている。気になるなら検査をすればいい。それに。病気だったところでそれが何なのかしら。あなたは何を恐れているのかしら。何が嫌なの。死ぬことが?

同じことを何度もやりとりしててうんざりする。なかなかわかってくれない。理解してもすぐに不安になる。