恒常

 雨。傘を広げて散歩に出かける。音楽は聴かない。うるさいと思って。

 梅雨らしいぐずついた天気。今年の梅雨は入りは遅いし空梅雨なのかしらと思っていたけれど、ここ数日はいい感じだ。ちゃんと梅雨であってほしい。線状降水帯は出てほしくない。

 梅雨は梅雨でいてほしいと思っているけれど、これもまた「ホメオスタシス」への願いというか、気候変動の中で変わらないものがあってほしいという、恒常性への祈りというか。物事うまくいってくれー!と、自分は見えないところで細かく祈っているのだろうと気づく。常なるものはないというのに。

 暑いという感覚がわからない気がしてきた。今日は比較的暑くない日だと思う。でも、じっとりと汗をかいている。汗をかいていることと私が暑いと思うかどうかは、別の話。前者は体の反応であり、ここを無視していると熱中症でやられるだろう。私は、とはいえ暑い暑いばかり言っていると夏そのものをストレスに感じそうで、それが嫌だから暑さの上限を引き上げようとしている。無意識に。引き上げ? 湯の中の蛙になるなよ、過剰に適応しようとするなよ、と自分に対して思う。本能としての反応と、世界のものの捉え方そのものを変えようとすることと。どちらも拾いたい。

 家に戻り、冷たい牛乳を飲む。牛乳が冷たいということは分かり切っている。わずかな涼もまた、拾おうとしている。