ゲーム配信を無感情で聞いている。

 ゲームの実況は作業BGMとしては良いものだと思う。とにかく音が欲しいと思うことがある。単調な、頭を使わない作業を意識の外に置きたいとき、その空白を埋めてくれるのが誰かのゲーム実況だったりする。雑談は駄目だ。その内容には情報があるから。興味を持ってしまうから。ゲーム実況の内容には何も興味がない。ただの背景音として、隙間を埋める為のもの。

 ふと画面に目を向けると、たまたまその人の手が視界に入った。その人は男性だった。指は長く、関節が太くて、手の甲は荒々しく険しく、血管が浮き出ていた。私の、もちもちした肉感のある小さな手とは、まったく異なる手。私は率直に、それを欲しいと思った。その手を持つ人生だったらよかったのにな、と。

 美しくなりたいとか、あんな風になりたいなとか、誰かの身体を見てそう強烈に思うことはなくて、自分の身体に納得というか、もはや意識にのぼらない、透明な自明のものなのに(それはとても幸せなことだ)誰かの手は欲しくなった。たとえば、その手を持つ誰かと手をつないだりしたら満たされるのかな。違うだろうな。

 ただ、それだけ。そこまで。