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ゴーグルを持っていくのを忘れた。ゴーグルの忘れ物、というのは微妙なところで、泳がなくも、ない。係員の人に借りることだってできるかもしれない。

そして私はどうしたかというと、ビート板を棚から引き抜き、ただひたすらキックの練習をしていた。バタフライ、平泳ぎ、クロールの順に25mずつを延々と泳ぐ。背泳ぎを入れないのは、ゴーグルがないから顔に水がかかるのが嫌だなと思ったのと、ビート板を持ちながら背泳ぎを泳ぐ文化がなかったからだ。

3という数字はいい。バタフライのキックをどんどんどんと泳ぎ、次は平泳ぎでスイスイ泳ぐ。次に出会うのは順番的にクロールで、バタフライではない。3という数字は、じゃんけんからもわかる通り、「あなた」と「私」で世界が閉じられない。だから気が紛れるし飽きが来ない。

三人組というと、人間関係でいえばあんまりいい思い出がないけれど(それは二対一という不均衡な状態に陥りやすく、そのときの理不尽さは筆舌にしがたい)aがいてbがいてcがいて、それらが一方通行の、関係は、一体どういうコミュニケーションになるのだろうと、考えるのが少し楽しかった。