死骸日記

道端で死んでいる鳩を見つけた。これまで見たどの鳩よりも凄惨で、おそらく首元を猫か何かに喰われたのだろう、ピンクの肉が見えた。新鮮な死らしい。

私はその横を通り過ぎて、小声で「うわーうわー」と呟く。すごいものを見てしまった、どきどき、である。

これが虫の死骸なら何も思わないだろうに。鳥類か哺乳類になると私は動揺するらしい。どうしてだろう。血の気配だろうか。虫もまた自身の体液で地面にシミを作るというのに。

この動揺が、本能的なものなのか、それとも後天的な、文化によって培われた何かに起因するのか、私にはよくわからない。

なににせよ、死骸を見た時、死と対峙した時、私は書かざるをえない。それは動揺を鎮める為に。そして、死が未知の、畏れ多いことだからだろう。未知の出来事は気になるものだ。

しばらくはその道を歩くのは避けるだろう。けれど誰かが(何かが)死骸をどこかにやってしまうはずだ。