俳句(2022年4月)

 2022年4月の俳句。

泥濘をよけた爪先躑躅かな

 春の泥として「春泥」ってのがあるけど、泥濘だけだと季語になるのかよくわからない。季語になると躑躅と季語が重なってしまう。

 昨晩の雨があがり、砂でできた道に泥濘ができている。スニーカーを汚したくないので泥をよけようと私は躍起になっている。目線が爪先から正面へと移るときに、飛び込んできたのは躑躅の赤。そういう句。

 

観覧車ラスボス彩る花曇り

観覧車を下から見上げるとそれなりの威圧感を与えてくる。あいにくの曇り空。観覧車がゲームのラスボスだとすれば、それを彩るのは背景にある曇天、みたいな句。

 

片恋のアパート陰に花水木

 道を歩いているとハナミズキを見つける。アパートの陰に咲いてた。一青窈ハナミズキ』は改めて今聴くと「なんて歌詞だ」と思うけど、そういうイメージも相まって、一方通行に思い寄せてる相手のアパートを寂しく去る人間、その人間が先ほどまで相手と眠っていた部屋の方を見上げるみたいなところまで含めて詠んだ句。俳句おもしろい。

 

春の川追い越されるは老爺かな

 川岸を老爺が歩いている。その歩む速度より川の方がよほど流れがゆるやかなのではと思って詠んだ句。

 

起き抜けの部屋の北窓ひらきけり

 横になってとろとろと眠っていたら時刻は18時40分だった。カーテンは開け放している。日没で部屋には夜が押し寄せようとしていた。天気も悪いので部屋の中は灰色に見える。昼寝はだいぶましになったけれど、いまだに起きるときは物悲しい。そういうのを込めて詠んだ句。もっといい表現があるだろうけれど、今はこれで精いっぱい。

 

春荒れの夜ゆめをみる卓上灯

 春の荒天で外は風が吹き荒んでいる。しかし部屋は一定の静寂を保ち、私はぼんやりと卓上灯を眺めている。