創作

寝る前の告白

ときどきだけども 一日の終わりの5分前に差し掛かり たりない が暴走する ことがある 暴れ回る精神をセーブするのは眠気とやらで 人間といういきものの制御機構は 正常に機能しているとご満悦だ たりない頭の片隅で

小島を切り崩す

小島を切り崩す それはとるにたらないことなのだと 気づくことから始めてみたら? ホワイトソースの海に黄金色の卵の島 かけられたチーズはとうに冷め 固くなりつつある とるにたらない存在なのね私って ぼそりと呟く 対峙する相手は悪魔的な笑みをたたえ、…

骨の記憶

池の真ん中、ぽつんと浮かぶ小島に大きなケヤキの木一望できる場所にベンチがひとつ剥げかけた白塗りのペンキ私が腰掛けると悲鳴をあげて傾いだ 凪いだ水面を見つめる私は火山灰を所望する降り積もる死の雪に埋もれるこの私朽ちた肉体のその先に骨にきっと刻…

沼の底

私はただ一人、沼の底を歩いていた。 履き慣れたスニーカーが沼底の砂を捉える感覚が、足を通して肺の方まで伝わってくる。前に出した足にぐっと力を込める。わずかばかり砂に沈み込む。沈み切ったところで爪先で砂を弾く。そうして体を前に押し出す。体が前…

悪しき種

電話に出たA子が苛ついているのがわかる。だから私は言ったじゃない、危ないからもう乗るなって。それからさらに5分ほど通話してA子は電話を切った。乾いた喉を潤そうと、アイスコーヒーのストローに口をつけた。 なんかあった? 私はA子に聞く。随分怒って…

青が好き

青色が好き。 それは空の色だから。 水を彷彿とさせる色だから。 青色の財布を買ったの。 じゃーんとお披露目したら「それって男の人用でしょ」と言われ、 初めて、あ、と気づいた。 店員のお兄さんは私にどの色も勧めなかった。 これは私が自分で決めた色。…

マスキングテープ

愛用していた浅葱色のマスキングテープの終わりが近づいていることに気づいた時、浩は背筋がゾッとするのを感じた。マスキングテープを使う場面は限られていて、この色だっていつ買ったのか覚えていないくらい前のものであるはずなのに。備忘のメモをデスク…

雨も幕も上がる

一晩中降り続いた雨は、午後四時ごろあがった。 暗闇の方から聞こえてくる雨音。しとしとと降る雨は地上にかかる紗幕のはたらきをしていて、私は世界からポコンと押し出されてしまったような、そんな心許無さを感じる。ひとり机に向かいながら書き物をする私…

白熱灯

密が生まれ育った団地で思い出すのは、まず階段の踊り場の白熱灯だった。 五階建ての団地は、いつもどこかの踊り場の白熱灯が切れかかっていた。夜になると明滅する灯り。椎奈はちろちろ点いたり消えたりする灯りの下では本が読みづらいからと、今日は一階か…