粉薬

 粉薬は苦い。はさみで斜めに切った角から、かかかかか、と口内に入れていく。今のところ盛大に顔面にぶちまけたことは、ない。喉の奥に細かい粉が詰まって、何もしたくなくなる。水を飲むことすらも嫌になる。でも、私は黙って水を飲む。喉の奥で粉が水に溶け、泥みたいになる。小麦粉に少しずつ少しずつ水を加えた時のあの感じ。そう言えばすいとんを久々に食べたいな。寒くなったら鍋を作って、その中にすいとんをぽとんぽとんと落として、何も気にせずたくさん食べまくるのだ。夢想。

 昔はとにかく錠剤を飲むのが苦手というか無理で、粉に変えてもらっていた。口の中にある異物をそのまま飲み込むことがどうしてもできず、指でつまんだ錠剤を、喉の奥の奥、できる限りの奥に押し込み、水で一気に飲み干すということをしてどうにか飲み込む。今はなんとか飲めるから錠剤でも「大丈夫です」と言う。今回は粉と錠剤を処方された。薬局の人が優しくて驚いた。普段飲んでいる薬はないから、自分が錠剤を苦手としていることを忘れている。

 粉薬の薬のフィルムのかさかさとした音。薬。薬ってのは確かに効くみたいだ。体調を崩さない私は、薬が効いているという感覚を味わうのも久々だ。あるいは自分の回復力かもしれないが。日に日に調子が良くなっていてそのことを喜ばしく感じる。頑張れ私の体。あとは、まとまった時間が欲しいな。次の休みは休みじゃない。その次の休みは、流石にどこかに出かけて己を労いたい。