ジョグ vol.12 面倒と後悔

ジョギングシューズではなく普段使いのスニーカーを履いてきてしまった。走り始めてすぐに気づく。引き返そうか。いいや、面倒。このまま走ろう。そう決めたはいいものの、後ろ髪引かれる。普通のスニーカーで走れば走るほど「ジョギングシューズで快適に走れたかもしれない距離と時間と体力」が消費されていく。消費された分が惜しいから、悔しいから、人はますます己の取った選択を肯定してしまう。戦争ってそういうものだろうな、とか思う。面倒や手間を甘く見ると、何かを滅ぼすよ? ということを、少なくとも頭には留めておきたい、と思う。

普通のスニーカーで選び取ったのは「靴を交換する為に引き返さなくていい」だけで、差し出したのは「快適なジョグ」だった。ジョギングシューズはクッションが厚い。それが「まるでふかふかのマットの上を裸足で走る気持ちよさ」だとすれば、普通のスニーカーのそれは「コンクリートに打ち付けられている」かのようだった(やや誇張した表現)。ああ、こうやって人は膝を壊す、と思った。今までジョギングシューズに守られていたのだということを痛感した。

次、こういうことがあったら面倒くさがるのはやめよう、と思った。面倒を選び取った方がなんだか正しい気がしてきたので。そもそも面倒なことが嫌なら、きちんと履く靴を確認してね、私。