朝六時半、ケーキ

 日が長くなるにつれて朝が早くなっている気がする。冬のあいだはあれほど起きるのが辛かったのに、ここ最近は朝五時起床などざらである。メカニズムはよくわからない。日の長さとは関係がないかもしれない。

 

 疲れているときに甘いものを食べることで回復する。この感覚自体に違和感はないけれど同時にもう一つの選択肢があるのではないかと思っている。つまり、疲れていないときにこそ甘いものを食べる

 冷蔵庫にはケーキが入っている。昨日の晩、どうしても食べられなかったものだ。さて、一日の終わりに己を労うつもりで食べるか。それとも…。

 「疲れていると、美味しいものを味わう力もないのよね」

 ふとそんなことを思った。であれば…。

 

 時刻は朝の六時半。私は皿にのせたショートケーキと対峙していた。お供は冷たい緑茶。温かいお茶でも良かったかもしれない。コーヒーもいいね。朝の六時半にケーキを食べるのは我ながらなかなか酔狂で気に入った。反逆だ、抵抗だ、反発だ、復讐、ではないな。復讐ではない。

 惰性の人生に抗いたい、とか思ってしまう。

 そういうファイト精神で煙たがられることもあるのではないですか。わからない。でも闘いたいときに闘うの、いいでしょう? 

 ショートケーキの上にのったいちごを手でつまみ、へたをとる。それを口に含むと甘酸っぱさが弾けた。フォークでスポンジを切り崩す。ふわりとした食感に生クリーム特有の重たい甘さが広がる。美味しい。ふふふと一人で笑う。

 癒す為に食べることも一つの在り方だが、もっと喧嘩腰に食べてもいいかもしれない。疲れていないときに食べるケーキは、ちゃんとケーキの味がして良い感じだ。