拘束

夢の話だ。

私は大学生でヨーロッパとアジアの狭間にある国に来ていた。何故か家族も来ていた。季節は冬で地面には雪が積もっていた。そしてその国は隣国から突如軍事侵攻された。

私たちはホテルに足止めとなった。人々で協力して窓に薄い板を貼ったり入口にはバリケードを設けた。室内に電気は通ってないようで窓の隙間からこぼれる白色の光だけが光源だった。

「明日移動しよう。隣国へ脱出する」

仲間内で方針が決まり、各々身支度をし始める。私は外に出てアメリカのコストコみたいな大型スーパーに赴く。色々と調達しなければならない。そこで私は軍人に見つかった。

テレビで見たことのある迷彩柄の帽子と服を着て、手には銃を持った、筋骨隆々の男だった。

「私は人の流れのその対岸に行きたいのです」

拙い英語でなんとか説明する。I want to go なんちゃら。

簡単なボディチェックを受け、後ろに腕を組むよう言われる。組んだ腕をガシっと拘束されて「歩け」と促された。どうやら行かせてくれるようだった。私の腕は軍人に比べれば細く、後ろに組んだ腕はまるで動かない。人間の力ってこんなに強いものなんだなと思った。手首が痛い。私は人に殴られた経験もなければ、身体的な拘束を受けたこともないけれど、ただただ不快な体験だなと思った。マッチョイズムだ。そして歩きながら気づく。侵攻してきた国とは言語的に違うからこの国の軍人ではないか。そうであれば幾許かリスクは下がるかもしれない云々。なんやなんやして解放されて、私は無事逗留地まで戻ることができた。

翌朝私たちは行動を開始する。道端では人々が作った火炎瓶がストックされており、そのうちのひとつを拾うとリュックにしまった(冷静に考えれば何馬鹿なことしているのだと思うけれど、私は夢の中では無力だ)。

割とスムーズに隣国との国境まで辿り着く。国を横断する道では人々が列をなしていた。国境のその先は庭園のような空間につながっており、庭園は俯瞰してみると独特の紋様を形取っていた(夢なので視点が色々移る)。

「ああ、あなたは仏教の国から来たのですね。であれば問題ありません。お通りください」みたいなことを言われ、すぐに国境を越えることができた。脱出先は仏教国だったのだ。

 

そこで夢が終わった。日々のニュースに無意識に影響を受けているらしい。就寝時間がやや遅かったこともあり、体がバキバキいっている。夢の中では軽かった身体に重さが宿る。うんざりするが私は今日も人間になる。