薄明光線 〜散歩に行く vol.16〜

崎陽軒シウマイ弁当を食べたことがなかった。食べてみようと、シウマイ弁当の為に布団から抜け出して身支度をし外に出た。秋の終わりの、冬の入口の青空に紅葉が映えていた。山に行くのもいいな、と思うも、クマが出るかもしれないな、と思い直し、海に行くことにした。まずはシウマイ弁当を調達するべく電車に乗る。

調達。950円とのこと。電車に再び乗って海へ。

時化ってた。波が高く、風が強く、岸からかなり離れていたのに飛沫が飛んできた。まあ、ここまで来てしまったし…と、深くは考えないで弁当の包みを解き、食べた。おいしかった。崎陽軒シウマイ弁当を食べる。実績解除。

以前、とある配信者の雑談で「人生というのは、ゲームのように実績解除するものだよ」云々という話があって、たしかに私も同じようなことをしている、と思う。崎陽軒の弁当や、カキフライの食べ放題を食べるや、箱根ロマンスカーに乗るやら、たくさんのミッションがいまだ達成されてない(崎陽軒の弁当はクリアしたね)。私が記憶する限り、ゲームの実績解除というのは、攻略の為の必須事項ではないこともあったはずで、解除してもいいし解除しなくてもいいという温度に私は安心する。選択肢が複数用意されていること。気が向いたときにそこに飛び込める自由があること。

弁当を食べ、海沿いをしばらく歩く。橋も渡る。横殴りの海からの風が強い、痛い。身の危険を感じる強さに私は笑う。欄干がガリガリ鳴る。壊れないか少し心配になる。下を覗くと、濁った茶色のたっぷりとした水が飛沫をあげて渦巻いている。落ちたら死ぬだろうなと思う。とても生きてるって感じがする。

空一面雲が覆っているけれど、遠くはそうでもなく、光が斜めに降っている光景は「天使の梯子」というのではなかったか(薄明光線ともいうらしい)。幻想的で美しい。世界は争いばかり、不本意なことばかり、でも一方で世界は間違いなく美しいということを、こういう風景に出会うとき強く感じる。

もうしばらく歩いて、Google Mapと睨めっこをし、先に進むのを諦め、予定より短めに切り上げて駅まで歩く。流石に疲れていた。風に長い時間あたってたし、よく歩いたから。

享楽を見つめたい。失望する、不安に思う、嫌気が差す。それは仕方のないことだと思う。生きている上での通過儀礼? それだけではないのだと、思い出すことが必要。

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