向こう側の震え

映画を観ようと思い、間違えて券を買った。行けるはずもない平日昼間の時間が記載された購入完了メールを見て、私は一瞬気が遠くなり、このミスをいかにして正当化しようか考えを巡らせる。正当化もなにも、私が時間をよく見ないで買っただけのことであり、そういう細かいミスは常日頃よくあるのだが、時間を間違えること自体は珍しいので「あらあら私は調子が悪いのかしら」などと自問する。忙しかった? ノン。

映画を観る気は無くなった。映画が終わるまでに自然に回復すれば観るだろうし、回復しなければ観ないだろう。

この文章を書くときは、既に、気づいたときの震えというか寒さというか、血の気が引いた感覚はひとつ向こう側の領域に移動済みで、膜越しに触っているような雰囲気だ。本当にショックだったんだけどね。もう遠い存在になってしまった。