並べる可能性

国立新美術館までの道を少し歩く。「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」を観に行くために。サンダルを履いた。サンダルはいい。冬でもずっと、願わくばサンダルを履きたい。寒いから履けない。朝食は食べたのだが、空腹で頭がぼうっとして集中できていないと感じたので、コンビニに寄ってツナマヨのおにぎりをひとつ買う。細い路地に折れて、人通りが皆無なのをいいことに歩きながら少しずつ少しずつ食べて胃に収める。雨が降ってきた。最初はぽつりぽつりと、すぐに大粒の雨が激しく地面を叩きつけていく。ツナマヨをもごもごと食べながら急いで折りたたみ傘を差す。天気雨だ。ぎらぎらと世界が明るい中、雨が紗幕のように輝く。幕の向こうに、国立新美術館の現代的な建物が見え、おおっと、入り口近くの券売所で少し列ができていたものだから、雨の中テントがあるとはいえ並ぶのか、いや問題はそこではない、早い時間なのにこんなに観にくる人がいるのかと思っていたら、テート美術館展の列だった。オンラインで買えばいいのに、とスタッフさんに思われてそう。でも、オンラインチケットではない理由は人によって様々であるという事情は置いておいて(割引とか優待とかそういう人はオンラインではないのだろうか)私の場合は、券を買ったら観に行かないといけないじゃないですか、それが苦手なのだ。観に行くかもしれない、で予定を保留し可能性をたくさん並べ、適切なタイミングで楽しむことこそが好きで、その日は生パスタか油そばを食べたかったのだけど(何故なら過去の私が食べたいと言っていたから)結局餃子定食を食べた。私の好きな食べ物のひとつ。