反動

伯母夫婦と従兄夫婦と父母妹夫婦との会食。楽しみにしていたし(何故ならおいしいものが食べられるから)刺激的であることに違いはないが、気疲れは避けられない。テーブルの一番端に座ってにこにこと、運ばれてきた皿を片端から平らげていく。私が話せることはない。こういう場においては「知っている」ことがカードの手札となって応酬を重ねていくゲームが行われる。私が教えられることはほとんどない。大したことない知識(おいしい店についてとか、そういう可愛さ)のやりとりに果たして意味があるのだろうか、あまり無いというか、空っぽな会話がずっと続いてらあ、と斜に構えている自分に嫌気が差す。雑談が得意ではない。これはノリが悪い私が悪いのだろうなあと思いながら、高いウーロン茶をちびちびと飲む。

解散後、私はかねてから行ってみたかった店にひとり立ち寄る。ルーブリーフのファイルをオーダーメイドで作ってもらう。勉強用に一冊作ってみたかったのでちょうど良かった。好きな物を選ぶときは自分にとって大切なものやことを考えるから、「戻って来れる」気がする。会食によって曖昧になった線が、再びくっきりと引かれていく。ついでに普段のメモ帳に使えるかもとその店のオリジナルバインダーも買い、ああ、これはある種の反動、緊張から解放されたが故の爆買いだろうとわかっていながら、ちゃんと末長く使っていくことを己に誓ってお金を払う。にこやかに店の外に出た。暑いと思うが、暑くはない。会食のやりとりは買い物によって上書きされだいぶ薄れている。こうして私は、自分にとって不都合な出来事を記憶から消していく。