本を買いたい

図書館に行っても絶望はしないけれど、書店に行くと絶望の味みたいな深い海の水を飲み込んだような感覚を覚える。私はその事実を忘れる。忘れるので、楽しいことがあるという幸せな思い出を胸にニコニコと書店へ向かい、足を踏み入れるや否や幻滅し呼吸が少し浅くなる。

今日もそういう日で、ああどうしよう、本を買いたいのに買いたい本がないとあせあせしていたところ「せや!イ・ランさんのエッセイを読みたかったんだ!」と萎れた花が水を吸って元気になるみたいに私はずんずんと本棚の間を進み、本を買うに相なった。やったぜ。

絶望に似た水の一つの原因は「買うという行為に対するハードルの高さ」なのだと思う。私は本を買ってこなかったにも拘らずたくさん読んできてしまった人間なのだ…。そのくせ本は買いたい人間なのだ多分。厄介。

ハリーが「スリザリンはいやだ」と言ったように、私は私が選べばそれが正解なのだと思うタイプで(この考えは非常に危険であると自覚しているが)本を買ったら満足。本を買うということは、自分にとってある種のカウンセリングなようなもので、何読みたい?何読みたくない? の自問自答で今の自分のコンディションを把握するところがある。多分、今回買った本はしばらくは読まないだろう。でも、本を買うという行為には意味があると思っている。