乳児と犬

乳児と犬とで留守番をする、とある休日。二人と一匹で川の字になり、一人と一匹はよく眠り、私はその横でうつぶせに寝転びながらスマホでこの文章を書き始める。と、乳児がぐずり始めたのですかさず教えてもらった抱っこ紐を使って抱えながら文章の続きを書く。

乳児の寝息が私の胸に当たりぐうぐうと音が鳴る。見下ろすと、健康的なまつ毛の長さと額のあたりに吹いた粉(フケというべきか)がよく見える。人差し指で肌を撫でると産毛の柔らかさを感じる。

私と乳児の関係は伯母と甥になるわけだが、ぐずったらそれを鎮める、それだけで、なんだか豪雨を祈りで鎮めようとする祈祷者の気分に近い。父親、母親ならまた違う感覚を抱くのか、あるいは私の気質なのか、よくわからない。自然を相手にしている感覚だ。

乳児は会うたびに一回り大きくなる。会うたびに「初めまして」という気分になり楽しい。成長というのは素晴らしいものだと思う。乳児のふわふわな産毛に頬を寄せる。そこに特別な愛情は感じない。頭蓋骨と発達途中の脳の重さを感じる。

犬の話をしよう。犬は額が大きい。撫でると確かな骨の気配を感じる。さぞかし立派でかっこいい頭蓋骨を持っているのだろう。彼は今のところ健康なので、その日が訪れるのは当分先だと思うが(また、私もそれを願っているが)骨壷に大きく美しい頭蓋骨が入るのだろうかということを考えてしまうのは、犬の骨壷というものを最近知ることになったからだろうか。年老いるまで、骨が、燃やされ小さくなる程の脆さになるまで、生きることができればいいと思う。

乳児はぐっすりと眠った。横に寝かせると、すぐにぐずるので結局抱え直す。留守番中は抱っこ紐が外せなさそうだ。本を読みながら待とうと思う。