ポシェット

 ポシェットを買う。気温が高くなり、ズボンのポケットに入れたものが汗で湿ってしまう季節になってきたから。去年の私にとって散歩はそれほど重要じゃなかった。今の私にとっては大切にしたいものとなった。だからポシェットを買って、それを肩から提げてたくさん歩き続けようと思ったのだ。

 ポシェットに入れたいもの。デジタルカメラ、ペン、メモ帳。入れなくてはならない物。スマホ、鍵。財布は必要ない。何か買いたいときにだけ入れる。

 早速ポシェットにものを詰め込んで散歩に出かける。このまま遠いところに行けそうな気がするし、実際それは可能なんだけど、本も入れたいし、メモ帳だけでは心もとない。ポシェットだけで遠く遠くに出かける為にはもう少し鍛錬が必要そうである。出かけられるようになりたいとは思う。いつか。

 飽きるのが早いので安物のポシェットにした。もし、3年このポシェットを使い続けられたなら、そのときは今よりちょっと良いものを買おう。「いついつまで使い続けたら~」というのは、物を買う時の私の決まり文句である。絶対使い続けるか、使い続ける為の練習用として買うか、ものを真剣に買うときの私はこの二択で考える。

 

 疲れていた。疲れの原因はわかっていた。ここ一週間の記憶が曖昧で、いやいやそんなことはあるまい、一週間ちゃんと生きていたじゃないかと考えたところで、いいや、漠然と一週間を過ごしたから記憶が不確かなのではなく、今日この瞬間の私がひどく疲れているからではと思うに至る。今まで「かつて、確かにあった物事が思い出せない(めそめそ)」と泣いていたのは、過去に問題があったわけではなく、思い出すそのときの自分のコンディションに寄るものだったのではないか。

 回復はしている。早く寝ること。できることなら、自分の好きなことについて何か書くこと。

 

 ポシェットに何を入れよう。私は考える。あとひとつ、どうでもいいものを入れるとすれば何がいいかを考える。飴。悪くない。棒付きキャンディーがいい。石。綺麗な天然石ね。でも、ほんとどうでもいいな。石って憧れるけどそこに心を寄せることができない。笛。体育の先生が使うような、鮮やかな色の安い笛。悪くない。次に、ちょっといいポシェットを買うまでに、ポシェットに入れるどうでもいいアイテムを見つけられたらいいなと何故か思った。