ジョイフルメドレー

 私は、人並みより少しだけ文房具が好きな人間だと思う。文房具の中でも特に筆記具が好きである。なぜなら私は書くことが好きだからである。そして、私は見えないと物事の存在を忘れるので筆記具はペン立て入れて見えるところに置いておきたい人間である。

 さて、ここまでの要素を箇条書きにしてみよう。

  1. 人並みより少しだけ文房具のことが好きだ
  2. 文房具の中でも筆記具が好きだ
  3. 見えないと物事を忘れるので筆記具はペン立てに入れたい

 ここから導き出せるものに何があるだろうか。ペンが増えていくと、自ずとペン立てが必要になるということは言えそうである。実際その通りである。そして、ここに事態をややこしくさせる要素をひとつ加えよう。私はプラスチック製品があまり好きではない。

 ぬ? プラスチック?

 嫌いではないけど、好きではないのであった。物を買う時のひとつの指標として「プラスチックかどうか」という観点があるぐらいには好きではない。とはいえ、私の身の回りの持ち物でプラスチック製品はたくさんある。本当にたくさんある。プラスチックという素材はやっぱり便利だ。

 さあ、ここで困ったことが発生する。ペン立てにペンを入れたい。でもプラスチック製品はあんまり使いたくない。100均でお手軽にプラスチックを、というのは気が引ける。でもどんどんペンは増えていく(ペンのボディは一体何でできているでしょう?そう、プラスチック!(おそらくは)大いなる矛盾だ。呆れてしまう)。

 この困った事態を解決する方法を、既に私は見つけている。ということで、先日久々にスタバを訪れた。あのスタバである。スターバックスコーヒーである。種明かしをすると、私の机の上にはスタバのカップ(どれもGrandeサイズ)が3つある。3つ!そしてここにもう一つ加わることになるわけだ。おめでたい(おめでたいのか?)。何を許容するかというボーダーは人それぞれ違うわけであるが、今の私は「飲み終えたスタバのカップを丁寧に洗って乾かしてペン立てに使うこと」は許容できるのであった。多分無理な人もいるだろうな、そりゃあそう、わかる、と戦々恐々しながらこれを書いている。でも、私はプラスチックのペン立てをわざわざ買う方が無理なのである。価値観というのはそういうものだ。

 利点としては、どうせ捨てるものを再利用しているという気兼ねのなさと、スタバに行く理由ができるのと(ペン立てが欲しくなったから!)、季節ごとにカップのデザインが微妙に変わるのが嬉しい、というのがあるだろう。良いことばかりだ。

 

 レジで慌てがちなのは健在なので、事前にホームページでメニューを調べてからスタバに行くという気合の入りようだった(それぐらい気合を入れるものだ、スタバという奴は)。気になるドリンクがあった。「ジョイフルメドレー」というお茶のメニューだ。何その楽しそうな名前。いきものがかりの曲の名前かな(「じょいふる」という曲がある)。絶対ジョイフルメドレー飲むぞー、私は意気揚々とお出かけの帰り道にスタバに寄った。ジョイフルメドレーはなかった。明らかにジョイフルメドレーだった場所は、黒のマーカーで黒く線が引かれて消されていた。あまりにショックで、レジのところで「あああ!」と小さく落胆の声を上げてしまったほどだ。店員のお兄さんに「ジョイフルメドレーですか」と聞かれた。悲しい。そうです。仕方なく、その一個下の「ゼンクラウドウーロンティーラテ」をGrandeで注文した。なんやの、ゼンクラウドって。

 ジョイフルメドレーはもう終わってしまうのかもしれない。悲しい。他の店舗、他の時間帯に行けば売られているのだろうか。でも、もう私はペン立てを手に入れてしまったわけで、次のペン立てが必要になるのは当分先だと思う。当分先であってほしい。願わくば、これ以上ペンが増えることのないように。いや、それは私が買わなければいいだけの話だが…。時々ならスタバに行けばよかろう。わかっている。私はスタバに付加価値をつけたいだけなのだ。ただスタバでドリンクを注文するなんて嫌なのだ。

 難しい性格である。そんなことを言いながら、私はこれからも時々スタバに行ってドリンクを頼むだろう。そして「ああ、勿体ないなあ」と思いながらカップをゴミ箱に入れる。