ブックオフ(仮)

欲しい本があったので、書店に買いに出かける前に念のためブックオフにあるかどうか確かめに行く。残念ながらブックオフの、ごちゃごちゃと並べられた本棚のひとつの、下から二番目の段にあった(値段は280円だった)。むむう、あるならば仕方がない、買うことにする。店内BGMで米津玄師と思しき声。幸せになりたいだとか、楽に生きたいだとか歌ってる(KICK BACK)。そりゃそうなんだけど、私も大体賛同するけど、今日の私は機嫌が悪いので苛々しながらそれを聞いている。改めて大声で言ったところで仕方ないじゃんか。努力しないと駄目なんだよ人は。そういう感想は、自分が得てしまっているある種の特権性みたいなものと食い合わせが悪く(ほどほどに生きていられているというのはおおよそ恵まれているということだ)自己嫌悪みたいなものに襲われる。私は努力をすることが好きだが、幸せになることに欠かせないものだとは思わないし、幸せはそもそもどうでもいいし(どうでもいいと思えるのは多分私が不幸ではないからだ、悲しいことに)話を戻して、努力できないことが悪いとも思わない。おのれ、よねづめ(逆恨み)。そして米津の後はOfficial髭男dismのSubtitleが流れる(驚くべきことだ、「おふぃしゃるひげ」とまで打つとOfficial髭男dismが変換候補に出てくる)。意識を本棚に集中させる。クリスティーのいい感じの文庫作品があったら買ってもいいな、まあ海外文学ってこの店あんまり置いてないけどなあと思ってたら、ジェーン・スーのエッセイが海外作家に混じっているのを発見する。笑う。ジェーン・スーは日本人のエッセイストである。えー、並べた人、ジェーン・スー知らないのか、まあ、知らないかー。えー。私は目撃した面白さと少々の落胆と呆れをゆっくりと味わいながらなおも本棚の間を回遊したが、結局芳しい成果は得られなかった。それで良いのだろうと思った。