昼の散歩。好きな曲を体に流しながら歩くのが最高に楽しい。

 体調は良好。半径5mぐらいの世界でコツコツと槌を叩きながら生きている。どこか痛むところはないか、悲しいことはないか、心揺さぶられることはあるか、など。この在り方が正しいとは微塵も思っていない。半径5mの世界で安穏と過ごすのはシェルターのような、そういう位置づけであり、いずれは世界を広げないと、そもそも自分の精神がもたないだろう。

 片側一車線の道路を挟んだ向こう岸に、カーディーラーがある。メーカーの名前がプリントされた鮮やかな黄色の幟が風ではためている。黄色、青の文字、赤。普段、その幟を綺麗だとは決して思わないだろうに、今日は偶々綺麗だと思えた。機嫌がいいというよりも、調子が良いと言うべきだろう。

 忘れないように、あとで反芻できるように、散歩の際にメモ帳を持ち歩くという無粋なことをしている(何故無粋かというと、基本的に私はメモを取ることをポジティブに捉えていないからだ。メモをするなんて愚かだとさえ思う)。それでも私がメモをとるのは、無粋だろうが、愚かだろうが、やっぱり逃したくないという相応の理由があって、今日も今日とてメモ帳に「幟」とだけ書いて(幟という漢字はちゃんと書けたので満足)ポケットにしまった。そしてペンだけ落とした。調子の良さと引き換えだなあ、せっかく気に入っていたのにと、心の中でふてくされつつも、ペンを改めて買う必要があるか歩きながら考えている。