メモランダム vol.12

散歩

カーディーラーの窓越しの客は何故か不遜に思える。「高い買い物をする」ということに伴うある種の権威性か。グダっとしていて椅子にちゃんと座われていない男が無表情でスマホを操作している。

空が青い。

整理してる写真のことを考える。昨冬はとにかく毎週のように色々なところに行った。今冬はどうするか。まだ具体的な形になっていないし、多分数日前に突然ひらめくものなのだろう。煎餅の缶にプリントした写真をしまっている。色画用紙で年月がわかるよう仕切りを作ってみたが、作ってみて仕切りが邪魔な気もしている。時期が明確に把握できた方がいいのか、それとも写真の束という物質性を重んじるか。引き続き考えたい。

助手席

車の助手席を思いっきり倒して、フロントガラスから空を眺める。実行しようと思ったことはないけれど、多分私は車中泊に向いている。けれど車の運転は向いてない。

本音

本音は戯言の中に隠したい。チョコの中のラム酒のように、見た目ではわからないけれど、噛んだ時に確実にわかるよう。仕込むときはさりげなく。

何にもできない日

何にもできない日だったなと思う。実際はそんなことは無いのだけど、体感として。

「これからは(実際は随分前から存在していたが私が認知できてなかっただけです)自分より年下の漫画家がどんどん出てくるわけで、そうしたら、読んでいたあの漫画の最終回を読まずに私が死ぬこともありうるわけだな」と思ったのでそう言った。特に場の空気が凍ることもなく、私の言葉は食べ物の湯気に溶けて消えてしまった。私自身もその言葉を忘れてしまった。

食事の席が終わって一人になり、先ほどの自分の言葉を反芻する。確かにその通りだと思う。今も昔も私は老いる一方で、これからはどんどんそれが加速していくような感覚を抱くのだろう。だから何?と思う。だから、何なのだろう。