たどり着かないカルピス

 ジョグ。青白く光る自販機、最上段右端にあるカルピスを買おうと、ポケットからぴかぴかの五百円玉を取り出す。投入口に入れると五百円玉は自販機に吸い込まれ、その体内を落ち、次の瞬間釣り銭口が空しく鳴った。む。返却された五百円玉を取り出し、もう一度自販機に投入する。からん。む。三度目の正直。普段ジョグの途中で飲み物を自販機で調達するときは必要最低限の小銭をポケットに突っこんで出かけるので余分な小銭を持ち合わせていない。自販機が五百円玉を受けつけてくれないなら私はいつまで経っても飲み物を飲むことができない。やっぱり駄目だ。釣り銭口に落ちる五百円玉の音は寂しく素敵な音だけれど。「走りながらカルピスなんて甘いジュースを飲むな。励め」という神さまからの諫言だろうか。その通りっちゃその通りなので諾する。試しに隣の自販機に五百円玉を入れてみたらそれは受けつけてくれた。仕方ない。グリーンダカラを選択。こちらはカルピスのようなべったりとした甘さはない。ジョギングのお供としては当然カルピスより適任で、しかし、私はカルピスを飲みたい。