トレッドミルの身体

 トレッドミル。いわゆるランニングマシーン。

 以前使ったときに気分が悪くなってしまったことを都合よく忘れ、好奇心の駆動に身を委ねた私は久しぶりにそれを使ってみる。25分。ケージの中のハムスターのように、ただただ足を動かす。

 私はそれを「走る」とは形容しない。また、トレッドミルは何故だか私を惨めな気持ちにさせる。

 多分、機械に走らされている感覚を払拭できないからだろう。それって惨めですか? ケージの中のハムスターをトレースする。あるいは動物園のゾウや水族館のアザラシを。それこそ彼らに憐憫の情を抱くのは人間のエゴじゃないですか、人間が他の生物より優れているとでも? とか考えさせるので、トレッドミル、嫌いだ。でも楽しい。普段やらないようなことをするのは基本的に刺激的な営みで、だから楽しい。

 そしてトレッドミルの難点をもう一つ。「気分が悪くなった」というのはこの点で、つまり、酔うのだ。トレッドミル酔い。慣れの問題という気もする。普段トレッドミルは使わないから。いつもはエアロバイクを漕ぐ。

 私の酔いの感覚はこんな感じだ。まずトレッドミルの特徴として、足は動いているけれど体は移動しないというのがある。風景も流れない。その状態を何十分も維持した上で、トレッドミルからいざ降りると、足が動いた分の帳尻合わせをするように、遅れて体が移動しようとする、いや、移動したということに追いつこうとする(体は移動していない)。それで何が起こるのかというと、体は静止しているのに、ぐいぐい体が前進する感覚に襲われる。風が背中を押しているかのように、前へ前へ。実態(体は動いてない)と実感(前に進んでいる)で大きくずれが生じる。気持ち悪い。

 さて、ネットで調べる前に個人的な感覚を書いたところで、さて、検索してみるか。ふむ。同様の事象は他の人にもあるみたい。三半規管の混乱。酔いやすい人。自律神経のバランスが乱れ気味な人、ミネラルや鉄分が不足の人、虚弱体質などで血流が悪い人、なるほど、鉄分足りてない人なので、当てはまりそうだ。

 トレッドミルをすれば普段のジョグのことが好きになるし、普段のジョグばかりやっていて弛んでいるときにトレッドミルをすれば新鮮さで体がシャキッとなりそう。だから両方やればいいと思う。面白いことは好きだ。