海浜植物

 出かけることは好きだし、写真を撮ることも好きだけれど、撮るためにはそこに自分がいなければならないし、私がそこにいたということが明白であるという理由で写真のことが嫌いになりそうな夜である(そういう気分のときもある)。

 

 感傷が続かない年齢になったとつくづく思う。落ち込むことに飽きたし、それは概ね良いことだと思う。時々、ウイスキーを舌でちびっと舐めるように、感傷を味わうのも悪くはない。たぶん。

 

 

 海も見たし、川も見たし、橋も渡ったし、稲穂も見たけれど、この日一番すきだと思った写真は海浜植物の写真である。

 風も雨もひどく部屋に籠りきりのかびた私だが、海浜植物にレンズを向けた日もあったのだと思うと、起こるはずのない風を感じる。結局、お出かけも頑張りすぎてしまうということだろう。「明日も頑張ろう」と思うのに、翌日はいつも魂が抜けた心地である。