想像力

電車に乗って本を読んでいると、隣に立っていた女性がしゃがみ込んでしまう。いとも容易く、という表現は適切ではないだろうけれど、あ、人間というのはこういう風にしゃがみ込んでしまうのかと思った。私は思わず「大丈夫ですか」と声をかける。眩暈はあれど、立っていられないほど、という体調不良を自分の中に持っていない私はこういう場合どうしていいかよくわからない。「大丈夫ですか」って、大丈夫なわけないだろ、立っていられないのだから。

幸いにも周りの人がやさしい人たちで、すぐに別の女性が席を譲り、体調が悪そうな女性は次の駅で電車を降りた。それでも気分が悪そうで壁にもたれてしゃがんでしまった。駅員さんが気づいてくれたので大丈夫だと思う。

という、一連の流れは、おそらく電車の案内的には「お客さま救護の影響で」みたいな言葉に集約されてしまうのだろう。その女の人は自分の足で立って電車から降りたけれど(だから電車の遅延はないけれど)それができない人だっている。「お客さま介護の影響で」みたいな言葉にリアリティは皆無で、私たちは想像でそれを補うしかなく、世の中には想像できない人もいて、舌打ちをしちゃう人とかがいる(その気持ちは私もわかる)。

 

知ることは「やさしさ」につながるのだと、私は多分信じてる。