ベイクドチーズケーキ

 疲れた疲れた疲れた

 と足を一歩前に出すたびに頭の中で「疲れた」が乱反射する。

 私は書店という空間が嫌いではないが、今日はどうもイライラする。読みたい文章のイメージはあるのにそれを見つけられないから。文字が空間に氾濫していて、長い時間は書店に滞在できない。そのことにもイライラする。今日はもうだめだ。結局、前々から買おうと思っていた1冊を手に取る(疲れたときに書店に行くものではないな)。

 ケーキを食べたいと思ったので、喫茶店に寄ることにした。アイスコーヒーとベイクドチーズケーキ。控えめな甘さにこっくりとしたチーズの味、クリームの甘さと添えられたミントの爽やかな風味。とても多面的な一皿だった。チーズケーキおいしいなーというのをテーブルの上に広げたノートに何回も書く。嫌な出来事、チーズケーキおいしいなー、明日やりたいこと、チーズケーキおいしいなー、関心ごと、チーズケーキおいしいなー。

 とにかく頭に浮かんだことを自動筆記人形よろしくただただ書いていくのがいいストレス発散になっていて、真っ白な紙か真っ黒なインクで埋まったときの謎の達成感は体験したことがある人はわかるはず。

 アイスコーヒーを飲んで、チーズケーキを食べて、疲労は幾分軽減された、ように思える。そう思えるだけで十分で、あとはぐっすり眠れば多分大丈夫だろう。眠るまでの時間稼ぎになればいい。

 

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