空 vol.2

 療養明けの雲である。「わーい、雲だー」と思って撮った。スマホではなくコンデジで撮る。スマホはシャッターを押した感覚がないから物足りないのだ。街中を歩いていると、立ち止まっている人が少ないように思う。各々目的地に向かって一直線に進もうとする。あるいは目的地なき散策。立ち止まっている人も例えば誰かと電話していたり、無目的な立ち止まりってのがない。無目的に何もせずその場に居るということは、人が多いとなかなか奇異に映るのかもしれない。がさごそと手持ちのカバンからコンデジを探す私は目的ある立ち止まりで、たくさんの人に追い抜かされる。カメラを空に向けるとき、周囲の人も一緒に空を見る。どうしてお前は写真を撮るんだと責められているような気もしないでもないが、カメラを持つ手の方が自然で私はそれに従うだけだった。

 

 相変わらず「毎月10枚の写真を選ぶ」というのは続けていて、ちょっと考えて消した過去の数枚を除き、417枚の写真は自分で選んだもので、7月ももう終わるから427枚になる。実際はその数倍の写真を撮ってきた。写真の暴力性に自覚的であれ、しかし私は、息を吸って吐くように写真を撮る人間なのだろう。何故? 写真を選ぶのは「明日を生きることができるように」だが、写真を撮る理由はあんまり考えたことがない。レストランに入って「どうしてそのメニューを選ぶの?」と聞かれたときに言葉に窮するのと似ている。

 自分の撮った写真をタブレットで眺める。「好き」というよりは「誇らしい」。よく生きたね~と思う。今のところそれ以外の要素を写真に見いだせず、私は今日も明日も気まぐれに写真を撮るのだろう。もう7月が終わる。以前印刷してから100枚を越えたのでネットプリントも注文した。