短歌と俳句(2022年7月)

短歌

人間を嫌いになるのがいやだから やりたくないな 新人研修

 そのままの歌です。人を知れば知るほどその人のことを嫌いになる気がして、だから嫌です。人のことを考えれば考えるほど嫌いになりそうで、嫌です。でも、そう思っちゃいけないのかなと思っているところもあって難しい。

 

翌朝は仕事があると知りながら 寝ない私は今日の亡霊

 今日に未練を抱く亡霊が夜の23時ぐらいを彷徨っている。就寝時間が遅くなるのは、その日一日への未練があるのだと気づいてから、少し考え方を変えるようになって夜更かししなくなった。

 

叔母からの西瓜が美味いと言ってるが 私たちには叔母がいたよ

 伯母と叔母、伯父と叔父の違い。漢字の間違い。西瓜を送ってくれたのは伯母。叔母が亡くなってからどれくらい経ったのか忘れている自分がいて少し動揺している。叔母は西瓜をくれるような人ではなかったけれど、別に私は構わなかったよ。

 

カッターで「死刑執行」を切り取った メスを持った外科医の気分

 秋葉原殺傷事件の被告の死刑執行。ニュースを知ったとき、心が一段冷えた感覚がした。私はこの事件のことを知っているはずだが、同時に何も知らなかったこと、そのとき気づいた。そして私はカッターをペン立てから手に取ると、カリリリリと刃を出して紙に刃を当てた。スーッとカッターを引いて新聞の一面と社会面の記事を切り抜く。今使っているカッターはデザインがシンプルでメスに似ていた。自分、外科医みたいだと思った。私は改めて死刑には賛同できないと思った。いかなる理由があろうとも、人が殺すこと、殺されることにうんざりしている。あの人はその瞬間までどんなことを考えていたのだろうと、また考えてしまう。

 

俳句

真っすぐに透けたグラスで麦茶飲む

 透明なグラスが好きになる季節、夏。