コロナ日記 vol.10

 平熱。喉の痛みは多少。

 今日で自宅療養としては最後になる。なのでこのコロナ日記も終わらせる。とはいえ、私たちは2019年の暮れからずっと「コロナ日記」の時代を生きており、新型コロナウイルスが人々に受容されるまでは続いていくのだろう。いいや、そのあともずっと。

 療養が明けるということで、いい機会だ、この10日間を振り返り考えたことを書いてみようと思う。

 

回復する過程を観察できた

 軽症とはいえ症状が出ていたので、多少は体調が悪くなりやがて回復していった。インフルエンザはこの四、五年はなった記憶がなく、わかりやすい形で体調を崩し、なおかつ数日間に亘って症状が続いたのは本当に久々。回復する過程を観察できたのはなかなか面白かった。人間には免疫というものがあって、薬飲んで寝て食べて飲んでをすれば治るものなんだなあという不思議。女の体には生理というものがあるから、それでも周期性のようなものは遠くないはずだが、生理は事象としては聊か慣れてしまっているところがある。自分の体にあるエネルギーのようなものを感じられたのは悪いことではなかった。

 

食べること

 発症して数日は自宅療養にも慣れておらず、一日一食とか、食べなくて済むなら食べない、みたいなモードになっていて、それはそれでいいのだが、やはり食べないと治るものも治らないのでは?と感じた。で、筋肉量が落ちた。食べる量も減らしているので体重が落ちた。これを利用して体重を落としたいところだが、食べる量が通常運転に近づいているので体重もV字回復している。舌打ち。

 

引きこもること

 「書けない」という問題はあるが、それを除けば私は引きこもり耐性は高い方だと思う。なのでずっと部屋にこもっていることは問題にならなかった。自分がどこにも行けない分、本を読むことでどこへでも行けることの効果を噛みしめた。

 

ニュースがわからない

 新聞とテレビに情報源を頼っているという気がした。ニュースがまったく入ってこない。やっぱり紙の新聞は一覧性においてインターネットでは得られないものがあると思うよ。

 

天気を気にしない

 ただでさえ天気予報を見ないのに、療養はそれに拍車をかけた。どうせ暑いし。耐えられなかったら冷房つけるし。以上終了。でも気にしなくていいってことは、気にする必要がないということとほぼ同義なんだよな。

 

マスクと手の消毒大事

 私は感染経路がある程度わかっているのでその上で言うけれど、マスクと手洗い(消毒)は効果があるのだろうなあ、と思った。療養明けても引き続き徹底したい。確かに感染は増えているけれど、マスクと手洗いしていれば防げるものでもあると思う。

 

サルベージ

 私は「もし~だったら」という仮定が苦手だ。自分ができることをやった上で「もし~だったら」と思うならまだしも、「もし~だったら」と思う多くの場合、人はできることをしていない。それでも自分の力では成し遂げられなさそうなことを夢想することもあるし、それを否定することもないけど、私は自分の力で成し遂げられなさそうなことを夢想することがあんまりないのかもしれない。それは悔しいからだ。私は自分の手の届くものを欲する。ぎりぎりクリアできそうなことを目標として口にする。できなかったとき悔しいし、自分の力を現実的に見極める力も大切だと思うから、かもしれない。まあ、違うか。分不相応なんて言葉も嫌いで、大いに夢を見ていいはずだ、でも夢を見られない。

 「コーヒー飲みたいなあ」「肉食べたいなあ」は現実に実現可能な願望で、それ以外にも「療養が明けたら~」と妄想膨らますあれやこれ、明日から叶えようと思えば叶えられるはずだ。11日前はどれもやろうと思えばできたことばかり。

 死ぬ間際に「~したかったな」なんて後悔をしたくない、という思いは、実現可能かわからない大望を抱き、そのためにがむしゃらに努力する、ではなく、自分の願望を無意識に抑圧する方向へ働いたんだろうなと思ってなんだか悲しくなったというか、本当にそういう思考がデフォルトになって、私は自分の願い事がわからなくなってしまった。

 療養がきっかけというわけではない気もするけれど、自分のしていること・考えていることをできるだけ言語化してみようとは思っている。今以上に? はい、今以上に。無意識の海にはまだまだ色々なものが沈んでいる。その広大で真っ暗な海から未知なるものをサルベージする。クリップボードとペンを持った私は、ひとつひとつについて書いていきたい。何故? 何故だろう。自分で自分がわからないというか、自分の立つ場所がわからない故に、進む方向もわからないなあということを考えているのだ。

 

 特に何か劇的なものがあったわけではない療養生活だったが、思うところとしてはこんな感じである。とりあえず自分の身体機能の回復過程についてはしばらく観察していきたい。