コロナ日記 vol.8

 平熱。寝起きの喉の痛みはまだ残っている。ただ、咳もほぼ無くなったし、ゆっくりだが回復しているのだろう。インフルエンザよりきついかどうかという対比が一つあるけれど、症状がすっぱり治らないという点でいえばインフルエンザより厄介だと思う。インフルエンザはもう少し潔い気がする。

 

水のような

 外に出られず暇なので、本を同時並行で4冊読んでいる。1冊を除きほぼ同じタイミングで読み始めているので、ページ数がダービーみたいになっている。A選手が先行していて、B選手が若干遅れている、C、Dは後半伸びるか否か。

 同時並行といっても、4冊広げて読むわけもなく、4冊を折りたたみチェアの足元に置いて、1冊読んで飽きたら次の本を読んで、というのを延々と繰り返すだけのことだ。読める本はとっくに読んでいる。誰に(自分でさえも)強制されることなくどこまでも読んでしまうだろう。問題は読めない本である。今読めていないのはそれが読めない本だからで、読めない理由を把握した上で読めるような工夫をしなければならない。

 本を読まなくて済むなら読まなくてもいいのだけどな。ぶつぶつ。息を吸って吐くように読める、水のような小説はあるのだろうか。そういう小説ばかり読むのは自分を無菌室に入れているようなものだから気が引けるが、穏やかに本を読みたいとも思う。江國香織は私にとっての「無菌室」に割と近い小説を書く作家であるが、江國香織結構読んでしまったからなあ。まだ読んでいない作家で、水のように読める作家を待望している。

 

膝抱え

 日が暮れようとしている。部屋が灰色のインクに飲み込まれようとしている。私はカーテンが開いている窓の下に体育座りをしてなおも本を読んでいる(折りたたみチェアから場所を移した)。そろそろ目で文字を捉えるのが難しくなってきて、部屋の電気を点けるべきだとわかっているが、立ち上がるのが面倒。やっとのことで顔を上げたのは18時で、そうだそうだ、あんさんぶるスターズ!!の新曲(『ハム太郎とっとこうた』のカバー)のMVが公開されるのだった! と急いでスマホを手で探る。怠惰な土曜日。本を読むのは私が知りうる暇つぶしの中でも時間がスローな類のもので(当社比)で、好ましい生き方だとは思うさ。本を読まなくても済むなら読まなくてもいいだろうが、読んだ方がたぶん、面白い人生だ。