月を見ていた。それは昨晩のことだ。
キッチンペーパーと鰹節と中華スープの素がなくなってしまったので買い物がてら歩く。いいや、歩きたいがために買い物をする。
七分丈でちょうどいい夜だった。これからどんどん気温が高くなっていくのだろう。今年の私は冬のきりりとした寒さを覚えていて、それはこの前の冬にたくさん出かけたくさん写真を撮ったからだと思う。私はあの空気の冷たさを覚えている。これは例年の私ではなかったことだ。夏に冬のことを思い出すことはあまりない。
ちょっとした広場。芝生のスペースだけ街灯がなく、街灯がない分、空がぽっかりと空いている。頭上には夜空。月と星と雲。
急いでいるわけではない。月を見たい気分になったのでベンチに腰掛け空に浮かぶ月を眺める。と、雲が流れて月を隠してしまった。月を飲み込んだ空がうっすら柔らかく発光する。月があり、星があり、その先には広大な宇宙が広がっているのだと、私は一人感動する。
しかし、待てど待てども月が出てこない。どうやら雲が勢力を増してきているようだ。仕方がない。ため息をつくと、ベンチから立ち上がり、散歩を続けることにした。