ベリーベリーストロベリー

 久々にサーティワンのアイスでも食べようか。五月の終わりだが、今日は30℃を超えるという。予報通り、からだに纏わりつく空気は熱が籠っている。そよそよと風も吹いているのだが、それ以上に太陽の光線が厳しい。

 サーティワンのアイスを食べるのはいつ以来だろう。すぐに出てこない。1年、いや、2年前だろうか。当時足を運んだ店舗のことは覚えているのに、季節の記憶がすっぽり抜けている。気まぐれな、穴だらけの記憶。

 ベリーベリーストロベリー、レギュラー、シングル、カップではなくコーンで。選択選択選択選択。何かを選ぶということは元気でなければ無理だ。そして程よく不真面目に行うものだ。一つ一つの選択に拘泥していたら精神が破綻する。頼むから選ばせないでくれ! 時々、ほんの時々だが、択の多さに辟易し、資本主義社会のことを恨めしく思う。そこには罪悪感も混じる。選択肢が多いことを喜べど憎むのは筋違いでは? と。でも言わせてもらいたいけど、社会の方が先にあったのだ。私はそこに生まれただけ。文句を言わせてくれ。このままでずっとやっていけると? ただ、私の中にあるやりにくさは、社会に対するというよりは人間観に寄与するところが大きく、社会がどうであれ変わらない気もする。ああ、アイスを食べよう。

 店員さんがベリーベリーストロベリーを専用の道具で掬っているのが見える。あの見事な球体こそがサーティワンの良さだ。丸々としたアイスが小さなコーンにちょこんとのって、差しだされたそれを私はにこやかに受け取る。アイスを食べながら歩こう。

 そういや、私はマンションが好きだな。街や町を歩くとき、何を見ているかって、人が住む家々で、戸建てよりマンションを、綺麗で新しいマンションより年季の入ったマンションの方が好きだ。どうしてだろう。生活感をより感じるからか。ベランダに干された敷布団、テレビのアンテナ、プランター、Tシャツ、ビニールプール(本当にそういうものがベランダの壁に立てかけられているのだ)エトセトラ。

 小さなピンクのスプーンでアイスを口に運ぶ。いちごの酸味より甘さが目立つアイスだ。私は斜め上を見上げる。魚の煮つけのような香ばしく甘い匂いが鼻をくすぐる。世界に存在する私以外のあらゆるものが面白いと思う。この感覚は偽りでないと思うのに、悲しさを感じる夕暮れは何なのだろう。無敵じゃないのか、私。アイスが溶ける。イライラする。