つぶ貝

 褒められたものではないと自覚している。が、私は他人の買い物かごを見るのが好きだ。特にコンビニとスーパー。

 会計を済ませ、買ったものを袋に詰めていたところ、清算済みかごの底に一枚のレシートが張り付いていることに気づく。私のか? いいや、財布と一緒にしまったはず。手に取ってよく見てみると、私ではない誰かのレシートのようだった。印字されている時間は19時11分。買ったもの、つぶ貝、つぶ貝、つぶ貝、以上合計754円。潔い。あまりの潔さ、素晴らしいなと感動する。つぶ貝はそれぞれ40%引きだった。

 酒のつまみか? わからない。世の中に「絶対」はありえないけれど、私がつぶ貝三パックを買う未来図はどうしたって描けない。圧倒的他者性。圧倒的不可能性。私には私の買わないものがあり、同時に私が買うものがあるということ。つぶ貝は買わない。それが買い物かごを覗くのが好きな理由。

 え、私? 何を買ったかだって。それは当然秘密である。