ペペロンチーノ

 ペペロンチーノしかたべられない日、というものがある。他の一切のものをたべたくない、だけどペペロンチーノならたべられる。そういう日が。

 冷蔵庫にしらす干しと長ネギのかけらがあったので、長ネギを小口切りにすると、しらすと一緒にオリーブオイル―既ににんにくのみじん切りと唐辛子の輪切りが炒めてある―にぶち込んで、あとは通常通りの作り方。

 問題なく、想定通りに、おいしいペペロンチーノができあがる。料理というのある意味で流動的で定まらないものだけれど、—同じ味を作るのにはシステマティックに可変的な要素を排除する必要がある—大まかにみればおいしくなるのだ。それは素晴らしいことだ。「こうなるだろう」がちゃんと達成される。

 自分は料理が好きなわけではない。つくることに過剰な願望も期待もない。ただ、3分お湯を注ぐより、コンビニで弁当を買うより、つくった方が面白く、実践的で、時間を埋められるという理由がいちばんしっくりくる気がする。