低糖質

 中身が入っているのか、はたまた空っぽなのか、細長い黒の霊柩車が横断歩道を跨ぐように一瞬だけ止まっていて「あの世とこの世の境界が眼前にあるぞ!」と内心思いながら青信号になるのを待つ。すぐに霊柩車は走り去っていき、横断歩道はただの横断歩道になり果てる。白色の吊り橋に見えなくもない横断歩道を渡り切り、私はコンビニに入ると低糖質のチョコパンを買う。低糖質なんて、ものすごく生を感じる食べ物な気もする。生きたいという圧がすごいから。雲海の上に頭を出した山のてっぺんで座禅を組む仙人は低糖質のパンなんて食べないだろうさ。