レースカーテンに何かが止まっている気がして目を凝らすと蛾が止まっていたのでぎょっとしてしまった。フリーズ。意図してこういう状態を作ることはできないから、自分で自分を俯瞰してみる面白い瞬間。特に悲鳴を上げたりはしないけど、一瞬固まった。演算。もっとも適した行動は何か。結局蓋つきのプラスチック容器を持ってきて蛾を捕獲することにする。容器はどこに置いていたっけ。無事に見つかると入れるのに少し手こずったけれど無事蛾を捕獲することに成功した。あとで出かけるので、その際に外に放してやろう。

 忌むとか恐れるというのは生得的なものなのかしらと、こういうとき、つい考えてしまう。虫は極端に苦手ではないにせよ手で掴むのは抵抗があるし(壊してしまいそうで力加減が難しい)予期できない動きばかりするのはびっくりする。それは果たして本能的なものなのだろうか。それとも文化的なもの?

 虫を好きになれたら楽しかったでしょうに。これもまた私の不可能性だな。

 外に出て蓋をあけると蛾はどこかへ飛んでいってしまった。その姿を見失うと途端に興味も薄れ、お出かけの目的に気を取られる。あとでこのことを書くように。それだけ頭の中でメモしておいて、さて、今日も暑くなりそうだとわくわくしながら歩き始める。空は青い。