水族館

水族館って美術館みたい。

今まで何度も水族館には行ってきたけれど、そんなことを思ったのは初めてだったので動揺した。動揺? そう、ちょっと慌てた。魚たちを見ている人々のことを見て、あ、人間って見られているのだなあ、と思ったから。その当たり前なことが当たり前に怖かったのだ。

 

水槽の前は混んでいたし人混みをかき分けてまで見たいとも思わなかったので水槽から少し離れて館内をぐるぐる眺めていた。水槽の前で立ち止まり私に背を向けている人たちを見るのは少し面白かった。見られていることの無防備さはこちらを狼狽させる(かくいう私もまた誰かに見られていることだろう)。これでは水族館ではなく「人類館」になってしまうな。都心のビル街とかは、まさに人間がオフィスに詰め込まれた、動物園ならぬ「人類園」なのかもしれない。いや、人間だって動物なのだけど。動物だよね(調べてみたらかなり哲学的な問いになるらしい)。そこまで想像して、私は気分が悪くなってきた。人間なんて、一所に集めて観察しても面白くないのでは? いや、面白いかもしれないけど美しい光景なのか? どうなんですか、と私は神様に聞きたい。ねえ、聞いてるでしょ? 返事しないだけで。予想はしてたが返事はない。私が人間だから面白くないだなんて思うのかしら。それとも人のことが嫌い? とにかく人間はマグロみたいに美しい肉体を持っていなかった(いや、稀に美しさを備えている人もいるけれど)。

 

売店で売られていたマグロのぬいぐるみが可愛かった。もふもふしてて抱き心地が良さそうで、ただただ愛される為の顔つきだった。きっと人間のぬいぐるみが売られていても私は欲しいとは思わないだろう。