ホテルのベッド

布団の中でぬくぬくする季節もあともう少しか…と寝しなに淡く寂しい気持ちに襲われた。私は布団でぬくぬく暖まるのが好きだから。

寒がりではないと思う。いまだにヒートテックを着るのは固辞しているし(驚かれる)靴下は履かないし(でもようやく冬の間だけスリッパは履くようになった、裸足で床をぺたぺた歩くのは流石に冷える)できることなら半袖を着たいし暖房はあまりつけないし。

裸足のまま布団の間にからだを滑り込ませると、膝下を車のワイパーの様にシャシャシャと左右に滑らせる。シーツはばっちり冷えている。だから紙のようにつめたく、私その冷ややかさが好きで、やがて己の体温で温くなるまで束の間のつめたさを堪能するのだ。

以前、旅行でホテルに泊まったときのことを思い出す。ホテルのベッドというのは、なんだかフレンチとかイタリアンの料理の皿の様で、私のからだに対してあまりに大きい。フレンチやイタリアンに限らず、おそらく和食もだけれど、器と料理の対比というのは大事なのだろう、器に対して料理がちょこんと盛られているイメージがある。あんな感じ。だからホテルのベッドって落ち着かないなと思いながら、旅中なので当然疲れていて爆睡するのだけど。ホテルのベッドでいくら足をバタバタさせたところでなんだか無駄な抵抗、という気がしてしまう。いつまで立っても人肌になってくれない、つめたい相手。

寝つきがいいというのもありがたい性質だわね、と最後に思ったところで、気がついたら朝だった。あの寒さは今年度最後になるだろう。