足を踏み外す

 いい天気なのでたのしく散歩をしていると階段を見つける。よし、いいぞと思い、私はその階段を上り始める。ヘッドフォンから流れる音に身を浸していると、段差にかけた右足がスカッと空を切って体が傾いだ。倒れる体を手のひらが受け止め土が手についた。ぴりっと痛みが走る。冷や汗。自分はどうやら足を踏み外したらしいと理解したのは一瞬遅れてのことだった。足を踏み外した。

 体勢を立て直すとぱたぱたと手を叩いて土をおとす。けたけたけた。笑い声がこぼれてくる。ああ、びっくりした。突然のことに出くわすと脳がフリーズしたのちにおかしな気持ちが湧いてくる。まだ反応できたからよかったものの、そして下りではなく上りだったからよかったものの、大ごとになってもおかしくない、そんな午後のひとときだった。私はこけたりこけなかったりする。