くすり

引き出しの奥にたくさんの薬があったので、面白そうだからと、私はぷちぷちと中身を出していく。それは私の薬ではない。私は久しく病院に掛かっていない。

オレンジとベージュのカプセルは見た目からして飲みたくなるようなビジュアルで、大量服薬というのを私は今日まで実感としてピンときてなかったけれど、どんどん器に溜まっていく様々なカプセル、様々な錠剤を眺めていると、大量に薬を飲みたくなる気持ちもわからなくはない。それはもはやシリアル。手のひらいっぱいに満たした薬たちをがががががと口にあおりたくなるのも宜なるかな。というか、薬をあけていく感覚の既視感は、枝豆をさやから出すときのあれだ。

だから個別に一錠一錠パッケージされてるのはとても理にかなっている。小分けにされることで、私たちはきちんとした量を服薬できる。まあ、正露丸とか瓶に詰められた錠剤もあるにはあるけれど。

全部の錠剤をボウルにあけたところで、飲みたくなるのを抑え、ビニール袋に入れるとゴミ箱に捨てる。しばらく薬を見ることはないだろう。そうあってほしいと、私は願っている。